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金本知憲新監督にタブーはない!
阪神に流れる“改革者”の系譜を継げ。 

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鈴木忠平

鈴木忠平Tadahira Suzuki

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photograph byKyodo News

posted2015/11/02 10:30

金本知憲新監督にタブーはない!阪神に流れる“改革者”の系譜を継げ。<Number Web> photograph by Kyodo News

すったもんだの末、1位指名にこぎ着けた明大の高山俊外野手と。後ろはやはり明大で2位指名された坂本誠志郎捕手。

野村克也、星野仙一という改革者を招いた歴史。

 平時ならば“電鉄体質”は、安定した人気と実力を保つための礎だと胸を張れるかもしれない。ただ、またしても優勝を逃し、ファンのため息とともに甲子園球場に空席が出始めた今は明らかに有事だ。リスク回避型の体質と真逆の人物が必要だったという。

 球団の歴史を振り返れば、うなずける。'99年に野村克也監督を招聘した。'02年には星野仙一監督。外部から2人の改革者を招いた末に、18年ぶりの優勝を手にしたのが'03年だった。

 人気球団の重圧、伝統の重みが安寧と閉塞感を生んでいく。それが限界に達し、敗北と失望につながった時、トップは改革者を頼んできた。10年間優勝から遠ざかっているタイガースにとって、今はまさに改革者再来の時だと言える。

ドラフト1位指名にも出た金本色。

 改革の色はドラフトにも出た。

 まず会議の前日、金本監督が宣言した。

「将来的にエース、4番を狙えるような選手だね。無難なドラフトを脱却しないと。欠点は大いに結構。入ってから直せばいい」

 この時点で、ほとんどのメディアが1位指名は県岐阜商・高橋純平や、関東一・オコエを想像した。ただ、ここでも先入観や常識を疑う改革者の本領が発揮される。

 ドラフト当日、候補選手の映像を確認した金本監督はスカウトに聞いた。

「(明大の)高山は3番、4番を打てる可能性ありますか?」

 そう聞くからには当然、自らも高山に長距離砲の資質を見出していたことになる。ただ、あくまで映像でのもの。生の高山を追ってきた第三者の裏付けが欲しかったのだ。

 答えはYES。

 この瞬間、高山1位指名を決めた。

 東京六大学の最多安打記録を塗り替えたことで「安打製造機」、「完成品」と周囲はイメージしていたが、金本監督は世間の常識にとらわれず「未来の長距離砲」と見抜いたのだ。

【次ページ】 “電鉄体質”を一刀両断した一言。

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