何度もブルペンで一緒になった坂本誠志郎。

　吉持亮汰と川越誠司で驚いていたら、今度は阪神が坂本誠志郎（捕・明治大）ときたから、もっとビックリもしたし、それ以上に嬉しかった。思わず、一緒に画面を眺めていた記者の肩を「よっし！」と叩いてしまった。

　嬉しくて、しかし悔しかった。

　実は彼とは、“ブルペン友だち”である。

　坂本誠志郎捕手が履正社高にいた当時、バッテリーを組んでいた飯塚孝史投手（現・大阪ガス）の「流しのブルペンキャッチャー」でグラウンドに伺った時、ずっと付き合ってくれた。彼の配球通りに私がサインを出して飯塚投手が投げる。そんな心躍る「流し」が実現できたのも、坂本誠志郎捕手がいてくれたおかげだった。

　明治大に進んでからも、昨年の山崎福也（現・オリックス）、そして今年の上原健太（日本ハム1位）と2年連続「流し」の時にブルペンで隣り合って、投手のボールを受けてきた仲である。

　彼の捕手としての“腕”は十分わかっていた。変化球も体の近くでしっかり捕球でき、投手へはいつもストライクを返す。アクションロスのない機敏なスローイングは、私が見た試合ではイニング間の練習も含め、90％近くが二塁ベース上ドンピシャの位置に届いた。

　投手を立てて、決して出過ぎず、気分よく投げてもらうことが最優先。但し、投手がひるんで打者に背中を向ければ、その途端にサッとマウンドへ駆けつけ、結構時間をかけて叱り、何をすべきなのかを説く。

　まさに絶妙の女房役であり、時として母親役でもあった。

今思えば醸していた本人の“プロへの覚悟”。

　高校時は小さかった。それが明治大に入って、会うたび、見るたびに体が大きくなり、それにつれて肩も強くなっていった。

　そこに、坂本誠志郎捕手の“プロへの覚悟”をかぎ取らなければならなかった。しかし、私は最初に会った頃の先入観にいつまでもとらわれていた。

　社会人で名手・名人になれるヤツ――。

　しまった！　やられた！

　阪神2位指名のコールを聞いた瞬間、私はその場にしゃがみ込んでしまった。オレはまだまだ甘い……。

　悔しさとうれしさと情けなさ、そして彼に対する申しわけなさ。しばらくは、腰が抜けたように、そうしているしかなかった。

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