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“クロップマニア”の市民が熱狂。
たった2戦でリバプールを完全掌握!? 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2015/10/25 10:50

“クロップマニア”の市民が熱狂。たった2戦でリバプールを完全掌握!?<Number Web> photograph by AFLO

リバプール就任で、チーム、ファン、選手から熱い歓迎を受けているクロップ監督。

オプションの4-4-1-1に早くも手応えが。

 チームの陣形は、早期のボール奪取が難しいと見れば更に4-4-1-1へと変わる。後方に2列目の防波堤ができるこの形は、最終ラインが盤石ではないリバプールにとっては好都合だ。事実ロジャーズ体制下では、意識も頭数も足らない後方のスペースをつかれて失点する場面が目立ったチームが、トッテナム戦では後方の安定性が増し、終盤にハリー・ケインがシモン・ミノレにセーブを強いるまで、決定機を与えずにいた。

 試合後のクロップは、「マイボール時に冷静さが足らなかった」と振り返っているが、その攻撃陣には、運動量のあるダニー・イングスが膝を痛めて今季絶望でも、エース格のダニエル・スタリッジと、最前線の焦点というオプションを提供するクリスティアン・ベンテケが戻ってくる。前線により決定力があれば、リバプールはトッテナムを敵地で下していたかもしれない。

 ロベルト・フィルミノも、復帰が目前だったアタッカーだ。ロジャーズは、今夏の獲得がフロント主導だったとも言われるブラジル人MFを、9月後半の戦線離脱まで2列目アウトサイドで起用することが多かった。ホッフェンハイムで台頭したドイツ時代を知るクロップであれば、元々流れる癖のあるフィリペ・コウチーニョを左サイドで使い、フィルミノを本来のトップ下で先発させる手を真っ先に検討するのではないだろうか?

初戦で「チーム」を感じさせた影響は?

 両軍無得点という結果自体は、代わり映えしない。しかし、柔軟ではなく迷いに見えるシステム変更が指揮官の自信低下を窺わせ、適材適所ではない選手起用が持ち駒に対する信用低下を思わせたロジャーズ体制末期よりも、クロップ体制初戦でのスコアレスドローは「チーム」を感じさせる1ポイント獲得だったと言える。

 続く10月22日のルビン・カザン戦(1-1)も同様だ。最終スコアはヨーロッパリーグでの過去2試合と変わっていない。しかし、直前のリーグ戦から大幅にメンバーが変えられた前体制下での2戦とは違い、スタメンの変更は、ホームゲームということもあって守備的なルーカスと入れ替わったジョー・アレン1名のみ。ララーナはフルタイムをこなし、中盤から突進したチャンが奪ったFKの流れから、オリジが頭で落としたボールをチャン自身が相手ゴールに蹴り込んでいる。

【次ページ】 奇跡を起こす必要も、妖精の粉も必要ない」

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