マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
ドラフト1位指名濃厚の剛速球右腕。
熊原健人のストレートを受けてきた。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byMasae Takahashi
posted2015/10/16 10:30
大学入学時は66kgだった体重もいまや86kgまで増えた熊原健人。そのストレートは上位指名必至のパワーだ。
「すごい角度でいったと思います、自分でも」
シュート回転の真ん中を2つ続けて、マウンド上で端正なマスクがゆがむ。
「ラスト1球! 投げ直しなし!」
引っかけ過ぎが2つ続いて、3つ目でこの日いちばん長くミットをにらみつけたそのストレートがホームベースの右の角をかすめて、「ボール」の位置でミットにめり込んだ。
なんて角度だい……。
納得?! と訊いたら、「納得ですっ」と即答。
「すごい角度でいったと思います、自分でも」
投げた本人が驚くなよ……。
抽選のあとまで残っているわけがない。
3年前の春。
朝の7時半に145キロを立て続けに投げてみせた三重中京大・則本昂大は、今、熊原健人の地元・宮城で東北楽天イーグルスのエースを張る。
そのお膝元で、朝8時すぎに140キロ後半、いや、受けた私には“150”が何球もはさまっているように見えた、そんな剛腕がドラフトを待つ。
仙台育英高・平沢大河遊撃手のドラフト1位指名を明言した楽天・星野仙一副会長。平沢が獲れなかったら、その時は熊原健人。そんな報道を目にした。
とんでもない。これだけのピッチャー、抽選のあとまで残っているわけがない。
球界の大人物を向こうにまわして怒られるかもしれないが、私のミットと手のひらは、そんなふうにコッソリつぶやいている。