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'85年、阪神日本一の陰の立役者。
川藤幸三が語る“控え”の重要さ。 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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posted2015/10/09 16:30

'85年、阪神日本一の陰の立役者。川藤幸三が語る“控え”の重要さ。<Number Web> photograph by Sports Graphic Number

「代打・川藤」は打席以外でも阪神の日本一を支える存在だった。

控えの起用こそよく考える必要がある。

――いつくるともしれない出番を待つ。辛くなかったですか?

「控えがキツい、思ったら辞めたらええ。ああいう準備がキツい思ったら、辞めたらええんです。誰しも選手はレギュラー目指してやって、力がないから控えになっとる。ただ、それでもそれぞれの役割ってものがある。レギュラーはレギュラーの、控えは控えの役割っちゅうもんがあるんです。ただ、そう考えると、逆にだから監督はベンチ入りの25人というのをどう考えるかが大切になってくるんですよ」

――25人をフルに戦力として使うための橋渡し役として川藤さんがいた。それが'85年のあのチームの強さですね。

「首脳陣との話し合いはよくしました。野球の基本はバッテリーだから。バッターはしっかり準備をしても打てる確率が低いんです。ただ補欠っていうのは、そうそうチャンスがないし、一つのミスがクビにつながる。レギュラーはええんです、多少のミスをしても。でも補欠にはそれが許されない。だから監督たる者が控えをどう使うか。それが選手にもチームにも大きなポイントになるんです。だから『(控え選手を使うときは)余計に考えてくださいよ!』ってことなんです」

調整役として首脳陣とやりあうことも。

――控え選手の使いようで勝負も左右する……。

「年間7、8割はレギュラーの勝負。でも残りの2割、3割を控えで、リリーフでどうやるのか。その確率を上げることが大事になってくる。だからあの年(1985年)は、ワシはバットより、そういうところ(調整役)を必要とされたということやろね」

――ベンチでは起用を巡って首脳陣ともよくやりあったとか……。

「よう言いました。吉竹とかがいきなり代打と言われて失敗して帰って来よる。『またですわ……準備もできない』って言う。だから土井さん(淳ヘッドコーチ)には『こういうときにいかに目を配れるかがコーチでしょう。2死なら(代打は)だれ、スコアリングポジションに走者がいったらだれ、と少なくとも事前に2人くらいには用意させて、それで起用してください。若い選手だって二軍に落ちる瀬戸際なんですよ』と文句を言ったりしました。その繰り返しでした」

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川藤幸三
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