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MMAブレイクのカギは“感情移入”。
『ROAD TO UFC JAPAN』最終決着は!? 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph byGetty Images

posted2015/10/04 10:30

MMAブレイクのカギは“感情移入”。『ROAD TO UFC JAPAN』最終決着は!?<Number Web> photograph by Getty Images

決勝戦は、かつてUFCにリリースされ復帰のラストチャンスだった34歳の廣田(左)と、「モテるため」と言って憚らない24歳の石原(右)との勝負となった。

34歳・廣田の意地と、24歳・石原の勢い。

 34歳の廣田は、かつてUFCに参戦したが、結果が出せずリリース(契約解除)されたことがある。このトーナメントは、いわばラストチャンスだった。一方の石原は24歳。格闘技をやるのは「モテるため」と言いながら、番組では亡き父への思いを語り、コーチのジョシュ(と視聴者)の目を潤ませた。

 試合は、石原の勢いと廣田の意地がそのまま出たような内容だった。前半は石原がフットワークを使いながら左フックをヒットさせていく。後半は、石原の足が鈍ってきたところに廣田が猛追。石原はパンチで廣田に尻餅をつかせたが、2ラウンド、3ラウンドを全体的に支配したのは廣田だった。

 どちらの勝利でも納得がいく、逆に言えばどちらが負けても納得のいかない微妙な試合だ。採点の結果は、ドローだった。ジャッジの1人が、3Rに10-10をつけたのである。

 UFCのルールでは、10-10をつけることもありうる。しかしそれは、異例のことでもある。大半の試合で微差を取って10-9がつけられているのだ。なのに、よりによってこの試合で、UFCとの契約をかけた試合で10-10がついた。

決着がつかなかった“最終回”。“続編”は……。

 ジャッジには“思い切り”が必要だったのではないか。トーナメント決勝なのに延長戦がなかったのは競技システムの不備とも言える。何より、廣田と石原は納得がいかないだろう。試合結果がアナウンスされた瞬間、両者は呆然。その後は苦笑いするしかなかった。

 どちらも勝てなかった。しかし、負けもしなかった。大会後の会見では、両者ともUFCと契約することが発表された。勝利ボーナスも双方に支払われるという。石原は感想を求められ、「モテる試合できてましたかね?」と言って取材陣を笑わせた。

『ROAD TO UFC JAPAN』の“最終回”であるこの試合は、決着がつかなかったがゆえに“続き”を強く意識させるものになった。これから、2人には外国人選手を相手にしたさらに厳しい試合が待っている。そこで結果を残せるのは廣田か、石原か。生き残っていけば、いずれ再戦することもあるかもしれない。そんな番組の“続編”は、またファンを熱くさせてくれるはずだ。

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