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どこまでも生意気なままで……。
柴田勝頼、黒ショートタイツの心。 

text by

井上崇宏

井上崇宏Takahiro Inoue

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photograph byEssei Hara

posted2015/10/02 15:30

どこまでも生意気なままで……。柴田勝頼、黒ショートタイツの心。<Number Web> photograph by Essei Hara

棚橋弘至とは1998年入門の同期。中邑真輔とは高校時代にレスリングの全国大会で負けている縁がある。

「一番強いのは柴田でしょう」の意味。

 強くありたいと思う気持ち、姿勢。たしかに柴田と総合で闘ったことがある総合格闘家Aにこんな話を聞いたことがある。試合はAの完勝だった。

「いや、柴田は強かったっスよ。打撃も強いし、何より気持ちと姿勢がいい。ただ、総合の試合の組み立てという部分がね、甘かったと思う。でも、そこはプロレスラーとして真っ向勝負っていうか表現しなきゃいけない部分もあったんじゃないスか? うん、柴田はみんなが思ってるより全然強い」

 また別の総合格闘家Bはこう言っていた。

「柴田選手はずっと出稽古に来ていて一緒に練習をしてましたね。真面目でどんなにボコボコにされても立ち向かってくるっていう、試合とまったく同じスタイルで。気持ちのいい選手でね、今もずっと交流があります」

 18歳でプロレスの世界に入り、のちにまったく違うジャンルの総合格闘技という分野に身を投じ、それまでプロレスラーとして積み重ねてきたものとは違うことを一から覚えていかなければいけなかったとき、たしかにそこに必要だったのは「強くありたいと思う気持ち、姿勢」だっただろう。

 格闘家Cからはこんなことを聞いた。

「今や総合とプロレスを比較するのは完全にナンセンスですが、プロレスラーの中で総合ルールをやって一番強いのは柴田でしょうね。というのは、最低3年は打撃の練習をしていないとまずパンチが見えないですから。パンチが見えなきゃ試合にならない。それは逆にボクらが1年や2年経験したぐらいじゃプロレスの試合が思うようにできないのと一緒ですよね」

「どこまでも生意気な柴田で」

 総合格闘技を経て、プロレスに復帰して3年。無趣味。オフの日もずっとプロレスのことを考えている。プロレスをやるということにすべてのエネルギーを注いでいる。

「天龍源一郎さんから『どこまでも生意気な柴田でいてほしい』って言われたんですよ。でも今はいろいろ経験して、もしかしたらその生意気な部分がちょっと薄れたかもしれない。だけどプロレスラーとしての完成形には近づいてきてると思うんです。まだまだ完成はしてないですけど、ある程度プロレスラーとしての自分が確立されてきてる。だけど、天龍さんに言われて、たしかに生意気な部分も魅力のひとつとして必要だなと思って、そこを取り戻す作業をしているところです」

 格闘家Cの言葉を借りるなら「最低3年」の時期は終わったということだ。柴田勝頼は、これから“プロレスラーとして”さらに強くなろうとしている。
 

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