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3兆円縮んだ音楽業界の試みに学ぶ。
スポーツ界に大規模な教育投資を! 

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並木裕太

並木裕太Yuta Namiki

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posted2015/10/02 10:30

3兆円縮んだ音楽業界の試みに学ぶ。スポーツ界に大規模な教育投資を!<Number Web> photograph by AFLO

マーケティングを主眼とした会合に登壇したこともあるジョゼ・モウリーニョ。

4.6兆円が15年で1.8兆円に!

 記事によれば、1999年に380億ドル(約4.6兆円)だった世界の音楽市場は、2014年には150億ドル(約1.8兆円)にまで縮小しました。これは個々のアーティストの責任ではなく、デジタル時代に対応しきれなかった音楽産業にこそ問題があるとアイオヴィンは考え、そうした危機感から、アーティストのマネジメントやイベント運営、プロデューサー、あるいは技術者など、産業を支える次世代の担い手を育てる必要性を痛感したのです。

 この記事を読んで、私は日本のスポーツ産業に思いを馳せました。甲子園では清宮幸太郎選手やオコエ瑠偉選手などスターが躍動し、サッカー界でも欧州のビッグクラブでプレーする選手たちが続々と出てきています。これまで考えられなかったような活躍を見せる逸材が競い合うように生まれる一方で、産業としての日本のスポーツは苦戦を強いられているのが現状です。

Jリーグは挑戦的な試みを始めているが……。

 縮小傾向にある産業を拡大方向へと転換させるには、アイオヴィンがそうしたように、思い切った投資をし、次世代の人材を育成する試みが必要なのかもしれません。

 例えばJリーグは、収入規模としてはほぼ横ばいですが、加入クラブ数の増加によって支えられている面もあり、成長は頭打ちの状況です。当然、リーグも強い危機感を抱いており、立命館大学とコラボレーションしてプロスポーツクラブの未来を担う人材を育成する講座を設けたり、堀江貴文氏ら外部有識者5名とアドバイザー契約を結ぶなどの取り組みを今年から始めています。

 教育機関や経済人と提携しながら知を集約し、次世代の発展につなげていこうとするJリーグの姿勢自体には私も賛同します。ただ、これらの活動が現状を打破する抜本的な改革と言えるのかと問われれば、やはりまだまだ不十分ではないかと思うのです。

 Jリーグがアドバイザーとして契約した外部有識者は、いずれも経営のプロたちです。ビジネス的な観点と客観的な視点から率直な意見を期待できる人選だとは思いますが、例えば欧州ビッグクラブの経営経験者やリーグチェアマンの経験者など、世界のサッカー界の最前線で培ったノウハウを日本にもたらしてくれる人物を招聘するという発想もあっていいのではないでしょうか。

【次ページ】 レアルの元社長やプレミアチェアマンを呼ぼう!

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