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田澤純一、2度目のオーディション。
圧倒的セットアッパー、守護神では?
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byGetty Images
posted2015/09/10 10:30
2013年、2014年はともに71試合に登板し、WHIPは1.20と1.19。メジャーでも有力なセットアッパーである田澤純一だが、クローザーはまた別の能力が必要なのか……。
上原でも「吐きそうだった」プレーオフ。
田澤はかつて、「会社や都市を背負って投げる」一戦必勝の社会人野球で抑え役を経験している。さらに2013年、あの上原でさえ「吐きそうになった」というプレーオフのプレッシャーの中、田澤は1点もやれない大事な場面で走者を背負いながら幾度もマウンドに上がり、その度に抑えてきたのだ。クローザーとして機能しなかったからと言って、その理由を精神面に求めるのは疑問が残る。
「メジャーリーグにはメジャーリーグの厳しさがあると思いますし、社会人には社会人の厳しさがある。……まあ確かにプレッシャーとか雰囲気はちょっと違うかも知れないですけど、抑えるという仕事は同じですから」
そう言う田澤の表情は、強がっているわけでもなければ、頑なになってるわけでもなさそうだった。
メジャーリーガーの日常に、失敗はつきもの。
田澤はメジャーリーグ6年目、中堅からベテランへと分類されるキャリアを築いており、実際にメジャーで247試合に登板し、14勝62ホールド、4セーブという数字を残している。
それと同時に17回も敗戦投手になり、19回のセーブ機会に失敗してきた。彼の日常にはいつも、成功と隣り合わせに失敗があるのだ。クローザーとして周囲の期待に応えられなかったのは事実だし、セットアッパーに戻るのは彼の将来にも多少なりとも影響する“人事異動”だったが、彼の中では数ある失敗のうちの一つに過ぎないだろう。
「いい経験をさせてもらったと思います。抑えられなかったのは自分の責任。どんな場所で投げても、どんな状態であっても、自分がやるべきことは変わらないですから」
厳しい現実を突きつけられたことは、今まで何度でもあった。クローザー? セットアッパー? 関係ねぇよ、そんなの。目指してるのは、いつも同じさ。今よりもっといい球を。今よりもっと確実に――。
田澤の日常的闘争は、これからもまだまだ続いていくのである。