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黒沢ヒュッテを守って55年。
藝大山岳部は藝大「山小屋」部!? 

text by

君塚麗子

君塚麗子Reiko Kimizuka

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photograph byAsami Enomoto

posted2015/09/03 10:30

黒沢ヒュッテを守って55年。藝大山岳部は藝大「山小屋」部!?<Number Web> photograph by Asami Enomoto

長野県大町市平字黒沢4976番3 予約&問い合わせ/kurosawahutte@gmail.com 1泊2500円~。自炊のみ。
一般開放もされており、北アルプスへ向かう人にも、建築に興味があるという人にも魅力的な山小屋だ。

水道にダム……あらゆるものを手作り。

 水道工事に限ったことではない。歴代の藝大生たちはあらゆるものを造ったり、修理したり、継ぎ足したりして黒沢ヒュッテを守ってきた。山岳部のOBでデザイン科の講師でもある柚木恵介さんは現在、山小屋の管理や部員のサポート役を任されている。

「小屋まで安定した水を引くためにはダムがないとだめだということが分かって、手造りしたんです。あとはいま、OBの協力の下、バイオトイレを作っています。基礎工事は業者にお願いしましたが、それ以外はすべて手作業です」(柚木さん)

「最近、黒沢ヒュッテを国の登録有形文化財にしようと活動を始めたんです」と語るのは山岳部OB会、「上野山の会」副会長の黒川威人さん。黒川さんは黒沢ヒュッテが完成した1960年に大学1年生で山岳部に入部。以来、在学中はもちろん、卒業後も黒沢ヒュッテの運営に深く携わっている。

「今まさに羽ばたこうとする鳥の姿のようだ」

「小屋が完成してすぐ、風呂や薪ストーブを馬ソリで運んだのをよく覚えています。雪が深く積もっていて大変だったんですよ。あとは資金集めも懸命にやっていました。串田孫一さんの講演会を企画してチケットを売ったり、スキー教室を開いたりね。そんな風に昔から多くの部員や関係者たちが携わり、この小屋を存続させてきたんです」

 黒沢ヒュッテは北アルプスに向かって張り出した“両片流れ”と呼ばれる傾斜のある屋根が特徴で、「今まさに羽ばたこうとする鳥の姿のようだ」とよく言われている。壁は南西方向が最も高く設計されており、大きなガラス窓が設置されている。また、天井が低くなった北東のスペースはベッドルームとして使用している。

「デザイン学的に優れている点が、文化財としてふさわしいというのももちろんあります。でも僕たちが強調したいのはもう一点あるんです」(黒川さん)

つづきは、雑誌Number Do、もしくはNumberモバイルでお読みください。

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