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代理人は本当に悪者か?
~『ジョルジュ・メンデス』を読む~

posted2015/08/17 10:30

 
『サッカー代理人 ジョルジュ・メンデス』ミゲル・クエスタ/ジョナタン・サンチェス著 木村浩嗣訳 ソル・メディア 1600円+税

『サッカー代理人 ジョルジュ・メンデス』ミゲル・クエスタ/ジョナタン・サンチェス著 木村浩嗣訳 ソル・メディア 1600円+税

text by

幅允孝

幅允孝Yoshitaka Haba

PROFILE

photograph by

Wataru Sato

 サッカー移籍市場の最前線で暗躍しているのが代理人だというのは、よく聞く話である。けれど、実際に彼らは何をしているのか? 長年抱き続けた疑問に答えてくれる1冊が登場した。

 C・ロナウド、J・ロドリゲス、A・ディマリア、D・デヘアなどの超一流選手だけでなく、J・モウリーニョ監督の代理人も務める1966年生まれのポルトガル人が本書の主人公、ジョルジュ・メンデス。元々はアイスクリームメーカーの工場で働き、レンタルビデオ店やディスコを経営していたらしい。そんな彼が、なぜ現在のサッカー界で最も影響力を持つ男に成り上がったのか?

移籍市場を牛耳る男が重んじる、忍耐力と仁義。

 駆け出し時代のメンデスが師と仰いだのはデポルティーボの会長レンドイロ。メンデスは、彼に会うため片道3時間も車を転がし週2回のアポなし訪問を敢行していたらしい。コネクションをつくるためだ。A・ファーガソンとの最初のミーティングでは、直前に交通事故を起こしたのにも関わらず、止血をしながら気合で出席。そう、移籍市場を牛耳るスーパーマンは実にシンプル且つ昔気質の哲学で動いていた。メンデスが重んじるのは、粘り強い忍耐力と仁義だったのだ。

 選手が動くことによって行き来するお金と放映権料がなければ、サッカーは今のスケールを保ち続けることができない。そんな時代においても選手と同じ目線に立とうとするメンデスは、友情と共感で選手と結びつく。サッカーを巡る新しい職種の発明者は、マメでポジティブな仕事人だったのだ。謎めいた代理人の世界が少しだけ明るく照らされた。

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