サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER

取材エリアで珍しく見せた「迷い」。
槙野智章は今大会をどう感じたか。 

text by

矢内由美子

矢内由美子Yumiko Yanai

PROFILE

photograph byTakuya Sugiyama

posted2015/08/11 10:40

取材エリアで珍しく見せた「迷い」。槙野智章は今大会をどう感じたか。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

最後尾で終始声を出してチームを鼓舞していた槙野智章だったが、チーム全体の状況を変えるまでには至らなかった。

北朝鮮に高さで屈し、韓国戦で見せた修正。

 連覇を目指し、意気揚々と臨んだ今回の東アジア杯。槙野はピッチ内外で多くの役目を買って出た。特に尽力したのはチーム守備のオーガナイズだった。

 槙野の仕事が成果を生んだのは2試合目の韓国戦だ。槙野と森重真人のセンターバックコンビは、北朝鮮との初戦で2メートル近い長身FWパク・ヒョンイルの高さに屈して1-2の逆転負けを喫しており、2試合目の韓国戦では身長196㎝のFWキム・シンウクに対してどう守るかがキーポイントとなった。

 この試合で最初に見せた修正案は、相手のロングボールに対して槙野とアンカーに入った藤田直之が挟み込む形で対応することだった。キム・シンウクに自由にジャンプさせず、高さを封じた。その後もチャレンジ&カバーを徹底することや、両サイドバックとの連係した守備で相手を封じた。1-1の引き分けではあったが、チャンスはさほどつくらせなかった。

 プランどおりに進めることができたのは、高さ対策だけではない。スコアや時間帯に応じて前線の選手の動きにも細かく指示を出し、チーム全体の守りを統一するよう、コーチングでも奮闘した。90分間声を張り上げ続けたことで、試合後は声がかれていた。

監督の指示を遂行することと、自分で判断すること。

 韓国戦でうまく守れた要因としては、ピッチ外での働きも大きかった。1戦目と2戦目の間の2日間、槙野は宿舎で何度もビデオを見直し、主にDFメンバー同士で集まっては意見交換を繰り返した。互いに思っていることをぶつけ合いながら、最良の修正策へと収斂させていくという作業は労力がかかる分、成果が出たときの喜びや手応えが大きくなるうえに、チームが結束することにつながる。

 意見交換の中で槙野が強調したのは、「監督から出る指示を遂行するのはもちろんとして、それだけではなく、ピッチ上で自分たちで考えてやることも必要だ」ということ。

「今の自分の立場は、昔とは大きく変わっていると思っている。自分が輝く前にまずチームの結果が最優先。勝利に向けて一人一人の力を引き出すための役割を買って出ないといけない」

【次ページ】 ウォーリアーから、オーガナイザーへ。

BACK 1 2 3 4 NEXT
ヴァイッド・ハリルホジッチ
槙野智章

サッカー日本代表の前後の記事

ページトップ