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小布施見にマラソンで出会った人々。
猛暑を完走した87歳の仮装ランナー。 

text by

金哲彦

金哲彦Tetsuhiko Kin

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photograph byTatsunori Suzuki

posted2015/08/16 10:40

小布施見にマラソンで出会った人々。猛暑を完走した87歳の仮装ランナー。<Number Web> photograph by Tatsunori Suzuki

小布施見にマラソンは、仮装も「本気」である。今大会では、ゴジラとモスラが出会う、なんていう奇跡も。

「金さん、このレースは日本三大仮装レースです!」

 コスチューム賞に毎回応募する常連ランナーがそう言った。

 大会ゲスト兼コスチューム賞審査委員長の僕だが、実はほかの仮装レースに参加したことがない。でも、この大会の仮装が”並み”でないことはなんとなく分かる。

 海の日の前日に開催される「小布施見にマラソン」も今年で13回目。

 真夏のレースなので、猛暑に見舞われることが多い。だから、スタート時間は早朝6時だ。

 にもかかわらず、長野電鉄が早朝臨時列車を走らせてくれるおかげで、8000名を超えるランナーが遅刻することはほとんどない。

 さらに、制限時間はハーフマラソンなのに5時間。

 エイドステーションはほぼ1キロおきにある。

 あらゆることが、一般的なレースの常識からはずれていて、初心者にとってもかなりハードルが低いレースなのだ。

 それもそのはず、「小布施見にマラソン」は、かつて、日経の「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」にも選出され、やることなすこと周囲の度肝を抜くことから“爆弾娘”とも呼ばれたセーラ・マリ・カミングスさんが創設者なのである。

 彼女の奇抜なアイデアが、コスチューム賞だけでなく、コース上のいたるところにちりばめられている。速さを競うのではなく、走ることを思いっきり楽しむのがこのレース最大の魅力である。

昨年は宇宙戦艦ヤマト、今年はゴジラで出走した人も。

 そして仮装といえばこの人!

「Number Do」の対談にも登場していただいた、日本一の仮装ランナー、千田健さんは昨年、どでかい「宇宙戦艦ヤマト」を岩手県の自宅から運んで参戦。

 ランニングにたとえると、日本新記録くらいのぶっちぎり優勝を飾った。

 そして、今年は巨大ゴジラの仮装で会場のランナーたちを圧倒した。リアルさと出来映えは、かつての特撮映画顔負けだ。

 ここまでくれば、もはや単なる仮装ランニングの領域ではない。仮装製作を生き甲斐にしているだけある。

【次ページ】 赤ずきんの仮装で走りきった87歳の女性も。

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金哲彦
小布施見にマラソン

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