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似た日程で前回優勝、今回は最下位。
東アジア杯とは一体何だったのか。 

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戸塚啓

戸塚啓Kei Totsuka

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2015/08/10 11:30

似た日程で前回優勝、今回は最下位。東アジア杯とは一体何だったのか。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

「大会に向けての準備期間がせめて2~3日でもあれば……」というコメントを出したハリルホジッチ監督。メディアの“言い訳報道”にも苦言を呈した。

前回も同じようなスケジュールだったが、結果は優勝。

 日本サッカー協会の技術委員会は、「時間がない」という指揮官のぼやきを大会前に聞き取っていなかったのだろうか。結果的に日本代表は、何を目的にしたのかがはっきりしないまま中国を去ることになった。

 順位は問題ではないとしても、最下位は不可避だったのか。

 そうではないだろう。

 振り返れば2年前の大会も、今回と同じようなスケジュールで臨んだ。Jリーグの合間に、慌ただしくチームが集合した。

 当時のアルベルト・ザッケローニ監督は就任3年目を迎えていたが、東アジアカップのメンバーに代表の常連は少数派だった。ぶっつけ本番で真剣勝負に挑み、ザックのチームは初優勝を飾ったのだ。

 2年前のチームにあって、今回のチームに足りなかったものは何か。

『チャレンジなでしこ』の戦いは示唆に富む。

 日本代表と同じ2試合勝利なしで最終戦を迎えた佐々木監督のチームは、中国との最終戦で2-0の勝利をもぎ取った。最終盤の連続ゴールで相手を突き放した。

 テスト機会に恵まれたことに満足していたら、88分と90+3分のゴールは生まれない。結果を残すことでテストをパスする意欲が衰えなかったからこそ、彼女たちは最終戦で勝利をつかむことができた。「勝って未来を切り開く」との野心が、「引き分けでもいい」という打算に打ち克ったのである。

勝利への欲求が、時間のなさを覆すには足りなかった。

 今大会の男子日本代表に、発見がなかったわけではない。

 2ゴールをあげた武藤や3試合連続フル出場の遠藤航は、海外組を交えたチームでもう一度テストを受ける資格を得た。持ち前のボール奪取能力に最前線への飛び出しを加えた山口蛍は、ボランチのレギュラー争いに再び食い込んでいくはずだ。

 ただ、ハリルホジッチ監督だけでなく選手もまた、「時間がない」ことを心のなかから締め出せなかったのではないか。

 コンビネーションやコミュニケーションの不足をカバーする勝利への欲求は、最後までチーム全体の意思とならなかった。それだけでなく、対戦相手を凌駕するレベルに及ばなかった。

 消化不良の思いをかきたてられた、何よりの理由である。

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ヴァイッド・ハリルホジッチ
佐々木則夫

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