シンプルに勝負に集中できている松山の勝算は？

　そんな松山がぼそっと口にする言葉の字面だけを追ってしまうと、前日の米国人記者のように「彼には勝利への渇望がないのか？」なんて誤解も招きかねない。

　そう、松山が勝利への渇望を抱いていないわけがない。心臓が破裂しそうなドキドキ感を必死に胸の中に抑え、冷静さと忍耐で勝利を追い求めている。

　どこまでもパットにこだわるのは、パットこそがバーディーにつながり、数字へ、結果へ、直結するから。

「やっぱりね、バーディーが、一番だから」

　それが、松山の常日頃の口癖だ。

　ショットはどうか、攻め方はどうか、アプローチはどうかと全方位的に理想のゴルフを追い求めるより、すべてをパットに集約するほうが、考え方はシンプルになる。頭の中、心の中を整理して挑むことはメンタルなゲームであるゴルフにおいては、とても重要で、それが彼にとっては最善策になるのかもしれない。

　セント・アンドリュースで2010年大会を制したルイ・ウエストヘーゼン、メジャー初勝利を目指すジェイソン・デイ、アマチュア選手のポール・ダン。通算12アンダーで首位に並んだ3人を5打差から追いかける最終ラウンド。

　パットが来るか、来ないか。

　そこに松山は賭けている。

「昨日まではトップが10アンダー。今日は2つしか伸びていないので、（差は）そんなに気にしていない。自分が伸ばせればチャンスはある。明日、5アンダー、6アンダー、もうちょっと必要かもしれないけど、それぐらいのゴルフができれば面白い位置に行ける」

　面白い位置――その答えは、月曜日に持ち越された明日、マンデーアフタヌーンにわかる。