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危機感、物足りなさ……。レスリング女王たちの葛藤。
~吉田&伊調、対照的な現在地~ 

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矢内由美子

矢内由美子Yumiko Yanai

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posted2015/07/08 10:30

危機感、物足りなさ……。レスリング女王たちの葛藤。~吉田&伊調、対照的な現在地~<Number Web> photograph by AFLO

吉田が準決勝で対戦した向田(左)はエリートアカデミーの所属。東京五輪の期待の星だ。

 レスリング世界選手権(9月、米国)の代表選考会を兼ねた全日本選抜選手権が6月19~21日に行なわれ、女子53kg級の吉田沙保里(ALSOK)と同58kg級の伊調馨(ALSOK)が、順当に優勝を飾った。

 2人は女子レスリングが初めて正式種目となった2004年アテネ五輪を皮切りに、北京、ロンドンと3大会連続で金メダルに輝いてきた最強女王。今回の優勝で世界選手権代表入りを決めたことで、4連覇を目指すリオデジャネイロ五輪に向けて順調に歩を進めていることを内外に印象づけた格好だ。

 とはいえ、今大会での両者の戦いぶりからは、それぞれが不安を抱えている様子も窺えた。

 若手の突き上げに脅威を感じていると告白したのは32歳の吉田だ。初戦こそテクニカルフォール勝ちで貫禄を見せたものの、準決勝では高校3年生の向田真優(JOCエリートアカデミー)に2点を奪われる予想外の内容。20歳の入江ななみ(九州共立大)と戦った決勝では第2ピリオド終盤にバックを取られるなど、5点リードから2点差に迫られるというヒヤヒヤの試合だった。

「久々に危機感を持った。若い選手にどんどん研究されている。霊長類最強と言われるけど私も人間。恐怖を感じた」

「私を倒して世界へ、と思う若者が出ないと」(伊調)

 引き締め材料たっぷりの吉田とは対照的に、若手の台頭を切望したのは31歳の伊調だ。今大会ではそのあまりの強さが敬遠され、この階級の出場者はわずか3人だった。骨のある相手が見当たらない中、冬場の膝の故障の影響を感じさせないまま、2試合の合計時間約2分半という秒殺のテクニカルフォール勝ち。

「物足りないというか、モチベーションがなかなか上がらないというか。私を倒して世界に行きたいという若者が出て来てほしいのだけど……」

 昨年、五輪3連覇を果たした63kg級から58kg級へ階級を下げた伊調にとって、軽い階級特有の動きを試合数をこなしながら身体に染みこませることができないのは、悩みのタネ。ついついぼやき口調になるのも無理はない。

 攻めの吉田、守りの伊調と、持ち味が対照的な2人は、悩みも対照的。世界選手権、リオ五輪に向け、どのような調整をしていくか。

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