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“岩手の星”菊池雄星が今もこだわっていること。
~パワーピッチングで脱皮なるか~ 

text by

石田雄太

石田雄太Yuta Ishida

PROFILE

photograph byNIKKAN SPORTS

posted2015/07/04 10:30

“岩手の星”菊池雄星が今もこだわっていること。~パワーピッチングで脱皮なるか~<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

6月21日のバファローズ戦は7回3安打無失点で自身4連勝。最速151kmをマークした。

 花巻東高校のグラウンドに立つと、不思議な気持ちに包まれる。いったいなぜ、この岩手の高校から立て続けにメジャーの球団が本気で獲得に動くほどの逸材が生まれたのか、と……ふと思い出したのは、菊池雄星のこんな話だ。

「高校の佐々木(洋)監督から、『岩手の中学生、高校生がプロを身近に感じられるよう、これからはお前が特別な存在であり続けてくれ』と言って頂きました」

 菊池が日米の球団から高い評価を受けたことで、岩手からもメジャーへ道がつながっていることが示された。その事実が先入観を打ち破り、当時、岩手の中学生だった大谷翔平の価値観を育んだ。菊池はこうも言っていた。

「僕は毎日、夜中の12時まで野球をしてる“野球中毒”の少年でした。野球のことを考えてる時間は本当に長かった。岩手は雪国ですからグラウンドで野球をやれる時間は限られてますけど、野球を考える時間は全国の誰にとっても一緒。みんな、平等に与えられてますからね」

しなやかさに力強さを両立させた「特別な存在」に。

 しかしプロに入って去年までの5年間、菊池は「特別な存在」にはなれなかった。プロ4年目の2013年、前半戦だけで9勝を挙げたものの、左肩の痛みを訴えて、結局、2ケタ勝利には届かない。菊池が当時をこう振り返った。

「大袈裟じゃなく、天国と地獄。勝てばこんなに楽しい世界だったんだなというのも感じたし、ケガをすればこんなにつまらないんだということも感じました」

 それが、プロ6年目の今シーズン、交流戦で3勝0敗、防御率1.71という数字を残し、リーグ戦が再開された直後、6月21日のバファローズ戦でも力強いピッチングを披露。菊池の好投を報じる紙面には、『覚醒』の二文字が躍った。

「高校の卒業式で、仲間から『ずっと一番でいてくれ』と言われました。そのためには誰にも負けちゃいけないんです」

 しなやかな腕の振りが持ち味だった菊池は、オフのトレーニングで体重を増やし、今シーズン、パワーピッチャーに生まれ変わっている。ピッチャーとして力強さとしなやかさを両立させるのは並大抵のことではない。それでも菊池は、岩手の野球少年にとって「特別な存在」であり続けるために、そして一度は封印したメジャーへの道をここから切り拓くために、“強い”ボールにこだわっている。

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