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なでしこ、オランダの猛攻を凌ぎ8強。
連覇に光明がさした、先制点の形。 

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栗原正夫

栗原正夫Masao Kurihara

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posted2015/06/24 17:00

なでしこ、オランダの猛攻を凌ぎ8強。連覇に光明がさした、先制点の形。<Number Web> photograph by AFLO

グループリーグでは見られなかった連動したサッカーで決勝トーナメント初戦を勝ちあがったなでしこ。しり上がりに調子を上げる姿は4年前と重なる。

大儀見「距離感が縮まったのがいちばん」

 この日のスタメンは「調子のよさよりも、(プレー)アベレージの高い選手をスタートから」と佐々木監督は話していた。2トップに大儀見と大野、左右のMFに宮間と川澄、ボランチに宇津木瑠美と阪口、CBに熊谷紗希と岩清水梓、左右SBに鮫島と有吉、GKに海堀あゆみらが入ったが、いったい何がチームを活性化させたのか。

 その理由をFW大儀見は、こう話す。

「全体的な距離感を前の3試合に比べると縮められた。ボールも人もかなり連動して、相手の特徴を消す前からの守備も狙い通りにできた。何より(選手間の)距離感が縮まったのがいちばんで、チャンスの数が増えたというよりチャンスの質が上がった」

 そして、先制点の場面についてはこう続けた。

「ボールも自陣からスムーズに運べるようになったことで、自分がそこまで下がることもなく、中央で待ってられた。あや(宮間)がクロスをどこに蹴るかはわからなかったけど、自然に反応できたのもよかった。(最後は有吉が詰めたが)人数をかけられたからこそ得点につながった。理想的だったと思う」

 先制できたことはもちろん、得点のカタチに手応えがあったようだ。

 78分の2点目も、大儀見、宮間とつなぎ、最後は岩渕真奈がスルーで流したところを阪口が左足で仕留めるなど、複数の選手が絡んだ見事な崩しからのゴールだった。

 ただ、ロスタイムにはGK海堀の凡ミスともいえる“失策”から1点を失い、最後は勢いづいたオランダの猛攻をなんとか凌いだ形となっただけに、すべてを手放しで喜べるわけでもない。

終盤に運動量が落ち込む、という課題はいまだ消えず。

 だからこそ、MF阪口は自らのゴールを喜びながらもこう指摘した。

「もし、オランダが最後の時間帯みたいにシンプルに(ゴールめがけて)攻めてきたら、また違った展開になったかもしれないですね。ある意味で、オランダがカウンターを仕掛けてくるのは予想通りでしたが、最後の怒涛の攻撃は本当に嫌でした。(選手間の距離感がなんで改善されたのか?)それは相手あってのことなので……。たまたまオランダが前からこなかったので、いい距離感でできたのかもしれない。一概に自分たちが良くなったから勝てた、というのも違うと思います」

 選手間の距離感が縮まったことで、相手を囲い込む守備がはまり、ボールを奪ってからは複数のパスコースが生まれ、攻守両面でスムーズさが増したことは確か。だが、課題をあげるなら、やはり前の3戦同様、終盤には運動量が落ち込み、相手に攻め込まれる隙を与えてしまったことか。

【次ページ】 なでしこのギアは上がったか。

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