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「自尊心は満たされました。けど……」
佐藤嘉洋が語るK-1ブームの光と影。 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph byNorihiro Hashimoto

posted2015/06/07 10:40

「自尊心は満たされました。けど……」佐藤嘉洋が語るK-1ブームの光と影。<Number Web> photograph by Norihiro Hashimoto

185cmの長身から繰り出すローキック主体のファイトスタイルで相手を苦しめ続けた佐藤。K-1MAXでブアカーオに唯一KO勝ちを果たしている。

新生K-1のほうが、佐藤の理想に近い。

 格闘技も、渋いプレーにスポットが当たるような世界になっていい。“豪快な倒し合い”だけでなく“巧みなディフェンス”や“緻密な作戦”がもっと評価されていいはずだ。そう考える佐藤にとって、新生K-1のほうが理想に近いものだという。

「競技として整備されてますよね。階級も-55kgの軽量級からあって。前のK-1では『階級がたくさんあると視聴者に分かりづらい』って言われてましたけど、そのハードルが越えられたら面白いことになると思います。もしかしたら、テレビでも階級なんて関係ない可能性もある。『視聴者を見くびるなよ』ってことかもしれないですよ」

「今のK-1が世間に受け入れられたら最高ですね」

 新生K-1でも、倒しにいく姿勢は重視されている。ただ、その方法論は選手それぞれだし、それがスポイルされることもない。-55kg級王者の武尊は打ち合いを厭わないタイプだが、-60kg級チャンピオン・卜部功也は対戦相手を完封するテクニシャン。キャッチフレーズは、元ボクシング世界王者の川島郭志と同じ“アンタッチャブル”だ。

「そう、卜部功也がいてこそなんですよ。実際、今の彼の試合はお金を払ってでも見たいと思いますから。それだけのテクニックとハートがある。『分かりにくい』とか『つまらない』って言われるかもしれないですけど、ブレずにこのままいってほしいです。僕も同じこと言われてきたんでね(笑)」

 いろんな選手がいていいし、それぞれの可能性を潰してはいけないと佐藤は言う。続けるうちに魅力が出てきたり、ファンの見方が変わることもあるわけだから、と。ほかならぬ佐藤自身もそうだった。かつての佐藤の印象は「強いけどつまらない選手」。しかし筆者が取材したイタリア遠征で、日本勢が苦戦する中、メインで堂々と勝利した姿は「こんなに頼りになる選手はいない」と思わせるものだった。

「今のK-1は選手の個性をうまく活かしてくれる。このまま地上波で流れて、世間に受け入れられたら最高ですね。そうなったら、前のK-1よりも長続きするんじゃないかと思うんですよ」

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