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錦織圭、勝負の綾はブーイング?
“ノーシードで最も危険な男”に勝利。

posted2015/05/28 11:20

 
錦織圭、勝負の綾はブーイング?“ノーシードで最も危険な男”に勝利。<Number Web> photograph by Tomoki Momozono

全仏の日本人最高記録は、戦前の1931年、1933年に佐藤次郎が記録したベスト4。あと3勝で並び4勝で史上最高に。錦織圭はどこまでいくのだろうか。

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秋山英宏

秋山英宏Hidehiro Akiyama

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Tomoki Momozono

 錦織圭が順当に全仏オープン3回戦に進出した。5月27日の2回戦で世界ランキング40位のトマス・ベルッシに7-5、6-4、6-4。第1セットは押され気味だったが最後にひっくり返した。第2、第3セットはともに序盤に大差をつけ、セット終盤にブレークバックを許したものの、余裕を持って逃げ切った。

 ただ、全体的には「辛勝」と言うべきだろう。

 開幕前にドローが発表になると、準々決勝まではBIG4と当たる可能性がないことから、錦織には有利な組み合わせとの見方が優勢だった。確かに、ノバク・ジョコビッチともラファエル・ナダルとも決勝まで当たらないのは、悪くないドローだ。

 しかしこのベルッシをはじめ、地元フランスのポールアンリ・マチュー、第11シードのフェリシアノ・ロペス(既に1回戦敗退)、第19シードのロベルト・バウティスタ(同じく2回戦敗退)ら、錦織の山にはクレーコートでは怖い顔ぶれが並んでいた。

ノーシードの中では、最も危険な選手の1人。

 ベルッシは、前哨戦のローマの3回戦でジョコビッチから第1セットを奪い、世界ランク1位に冷や汗をかかせた。翌週のジュネーブでは優勝。勢いに乗ってローランギャロスに乗り込んだ。

 今大会のノーシードの中では、最も危険な選手の1人と言える。ノーシードにこういう選手がいるのが、今の男子テニスの厚みであり、楽な組み合わせなどありえないのだ。

 第1セットのベルッシはストロークのボールがよく伸び、挑戦者らしく躊躇なく強打をたたき込んだ。錦織のラケットの振りも鋭かったが、ベースラインの内側に入って決定打を放つ場面は少なく、後方で打ち合う場面が続いた。

「途中まではサービスキープに必死だった。お互い、プレッシャーがかかりながらのサービスゲームだった」

 そう錦織は打ち明けた。リターンゲームでもブレークポイントを握るところまではいくものの、あと1本が取れない。サービスゲームに神経を使いすぎて、相手のサーブを破るところまで集中力が持続しないのだ。相手のサウスポーから繰り出されるサーブ独特の跳ね方にもうまく対応できていなかった。

 押し込んでも、土俵際で押し返される。あとひと押しする精神力が絞り出せない。フラストレーションだけが溜まっていった。

【次ページ】 錦織が浴びたブーイングが試合の転機に。

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