W杯の敗戦から立ち直るシーズンのはずだったが……。

　EL予選出場権獲得がほぼ絶望となった指揮官は、TVカメラの前で精気なく敗北宣言をした。

「点を取っても守備のエラーがこう頻発するようでは、勝つのは難しい。先週の2失点も今夜の3失点も、我々がインテルであるなら犯してはならないミスだった。残念だが、欧州(カップ戦)には行けない」

　厳密にいえば、6位のジェノアはUEFAからEL参加ライセンスの承認が留保されているため、インテルの予選出場への希望はゼロではないのだが、彼らがグラウンド上の勝負で、フィオレンティーナやジェノア、サンプドリアに及ばなかったことには変わりがない。

　シーズン終盤にかけて、マンチーニ監督はMFエルナネスをトップ下に入れて2トップと中盤の連携を改善したが、守備ラインのプレーバランスは安定しなかった。長友が怪我から復帰したチームは、以前から課題だった守備連携のズレを修正できていないままだった。

「サッカーをする以上、楽しまなきゃいけない。いい緊張感をもってね」

　前半戦のミラノ・ダービーの後、長友はそう語っていた。昨秋に7試合を欠場し、インフルエンザも患ってサッカーができなかった時期に、あらためて学んだのだ、と。

　一時はワールドカップでの敗戦をひきずって、目標が見えなくなった。サッカーも楽しくなかった。それでも、どうにかそれらを乗り越えて、吹っ切って、また新しい長友佑都を見せられる。

　今シーズンが始まる前、長友はそう言っていた。

2016年夏に契約が切れるが、延長を急ぐ気配はない。

　マンチーニ監督が就任し、長友に求められるタスクも変化した。故障で長期離脱していた間に、クラブの構想やチーム内の立ち位置も変わった。

　長友が成長する余地はまだ多分にあるが、来シーズンへの準備を進めるクラブや監督が、'16年夏に契約が切れる背番号55との契約延長を急ぐ気配はない。

「来季はスクデット争いができるチームを作る」と明言しているマンチーニは、トヒル会長から今夏の大型補強の約束を取り付けている。

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