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復帰の森田あゆみが、苦境の中で見せた成長。
~フェド杯で溢れた“純粋な喜び”~ 

text by

秋山英宏

秋山英宏Hidehiro Akiyama

PROFILE

photograph byHiromasa Mano

posted2015/05/18 10:00

復帰の森田あゆみが、苦境の中で見せた成長。~フェド杯で溢れた“純粋な喜び”~<Number Web> photograph by Hiromasa Mano

試合後は「ベストの動きにはもう少し試合を重ねる必要がある」と細部のミスを悔やんだ。

 フェドカップ日本代表は、この4月、ワールドグループ2部復帰を懸けてベラルーシと対戦、決着は最終試合までもつれたが、相手のエース、ビクトリア・アザレンカの単複3勝を挙げる活躍の前に涙をのんだ。惜敗の中での光明は、森田あゆみの2年ぶりの代表復帰だろう。

 元世界ランク40位の森田は腰痛の悪化で昨年7月にツアーを離脱、復帰は今年3月にずれ込んだ。フェド杯の前にはツアー下部大会に一度出ただけで、当初は代表の4人に入っていなかったが、負傷の穂積絵莉に代わってメンバーに入った。最初はダブルスに出場する予定だったが、吉田友佳監督はシングルスにも起用。この時点で日本は1勝2敗、あと一つ敗れれば敗退となる土俵際だった。森田の世界ランクは451位に下がっていたが、吉田監督はその実力とフェド杯単複通算22勝13敗の実績に懸けたのだ。

 実戦を離れていた影響か動きはやや鈍く、ショットの精度も全盛時に及ばない。しかし、第1セットは2-5から逆転。最終セットも終盤に形勢を逆転し、7-6、4-6、6-4の勝利。15歳で全日本選手権を制した強打は錆びついていなかった。森田は最終試合のダブルスにも出場、敗れたものの「体に問題なく戦えたのは自信になる」と振り返った。

経験豊富な25歳が、何度も握り拳を作った。

 強調しておきたいのは、森田のポジティブで真摯な試合態度だ。体の不調をかかえていた頃は淡泊な試合ぶりが目立った。しかし、2年ぶりに日本代表の赤と白のウェアを着た森田は、届きそうもないボールも必死に追いかけた。本来は両サイド両手打ちだが、リーチを稼ごうとラケットを片手に持ち替え、腕を伸ばした。経験豊富な25歳が、何度も握り拳を作って自分を励まし、新人選手のようにひたむきに戦っていた。

3月の復帰直後、森田はブログに「久しぶりの試合は多少上手くいかなかったり、動きが完全ではなかったりはありますが、そんなことも気にならないくらいすごく楽しかったです」と書いている。今の彼女は、ボールを追ってコートを走る、球技の純粋な喜びを取り戻しているように見える。だとすれば、半年以上の離脱も無意味ではなかったと言える。その表情や前向きな試合態度を見れば、森田はカムバックを成功させたと断言してもいいだろう。

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