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<J助っ人外国人から日本への提言> ピエール・リトバルスキー 「長期的視野でチーム作りを」
 

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田邊雅之

田邊雅之Masayuki Tanabe

PROFILE

photograph byKoji Asakura

posted2015/05/06 10:00

<J助っ人外国人から日本への提言> ピエール・リトバルスキー 「長期的視野でチーム作りを」<Number Web> photograph by Koji Asakura

1960年4月16日、ドイツ生まれ。市原などでプレー、横浜FCや福岡で監督に。現在、ヴォルフスブルクのスカウトを務める。

代表監督の選出にはコーチ構成にも配慮を。

 代表監督を選ぶ際には、コーチングスタッフの構成にも配慮しなければならない。外国人だけで陣容を固めたりすれば、チームは絶対に機能しなくなる。ディテールを詰める作業が疎かになるだけでなく、選手は監督のスタンスに疑念を抱くためだ。

 これは少し想像力を働かせれば、誰にでも理解できる。日本人指導者を重用しない監督が、日本の選手を全面的に信用する。そんなふうに思えるだろうか? イビチャ・オシムが積極的に日本人コーチを登用したのは、むしろ例外的なケースだった。

 以上の段階を経て、初めてチームの戦術やコンセプトの策定が始まる。ただしここでも、首脳陣が選手たちと共同で道を模索していくことが鍵を握る。

 日本人選手は監督への忠誠心が強いが、独自の意見も持っている。当然、ポジションであれ攻守の役割であれ、全員が納得した上でプレーするのでなければ、チームのポテンシャルはフルに発揮できない。はたしてアジアカップの本田圭佑は、心から喜んで右サイドをこなしていただろうか? 私の目には、そう映らなかった。

 選手と二人三脚でサッカーの方向性を探っていくことは、短期的な結果に左右されない強化の指針、まさに「自分たちのスタイル」を築き上げていくためにも、きわめて有効になる。

ドイツがW杯制覇できたのは、指導の一貫性が大きい。

 ドイツ代表がブラジル大会で世界の頂点に返り咲いたのは、指導の一貫性に負う部分が大きい。クリンスマンからチームを引き継いだレーブは、EURO'08、南アW杯、EURO'12と3大会連続で無冠に終わりながらも、戦術やチーム作りのポリシーを頑として曲げようとしなかった。そして協会側もレーブを信任し続けた結果として、大輪の花を咲かせている。

 受け売りは禁物だが、ドイツのモデルは参考になる。日本人選手の身長が急に伸びることなどありえないし、シュートの精度を短期間に上げるのも不可能だ。唯一できるのは腰を据え、選手とチームを鍛え上げていくことなのである。

 体系的で、秩序だった仕事ができるのは日本が世界に誇る美徳だ。その長所を真に活かすためにも、今求められているのは大局的な視点で――私がプレーしたJリーグで「百年構想」が掲げられたように、代表についても、新たな発想で国家の大計を再び論じていく作業だといえる。

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ピエール・リトバルスキー

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