格闘技PRESSBACK NUMBER

圧倒的な、あまりに圧倒的なV8。
山中慎介の「神の左」を支える名脇役。 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

PROFILE

photograph byHiroaki Yamaguchi

posted2015/04/17 11:25

圧倒的な、あまりに圧倒的なV8。山中慎介の「神の左」を支える名脇役。<Number Web> photograph by Hiroaki Yamaguchi

山中慎介の「神の左」は、当てずとも存在だけで相手の動きを大幅に制限している。それでも、最後は左で締めたのが山中らしい試合でもあった。

 いつもとは違う“山中劇場”だった。

「神の左」でブッ倒すラストシーンは同じでも、異なるストーリーが用意されていた。「左」の引き立て役にとどまってきた脇役の「右」が、新展開をもたらしたのだ。主役を食ってしまうほどの存在感が、山中のボクシングそのものをスケールアップさせていた。

 4月16日、大阪・府立体育会館。

 日本で行なわれる今年最初の世界タイトルマッチで、滋賀県出身の王者にとって大阪は地元のようなもの。アンダーカードには辰吉丈一郎の次男・寿以輝のデビュー戦も組み込まれ、会場は大いに賑わいを見せていた。

 アルゼンチンからやってきた挑戦者ディエゴ・サンティリアンが、軽い足取りでリングに入ってくる。レコードは23戦無敗。世界王者クラスの強豪との対戦は一度としてないものの、無名のまま国内タイトルを獲得したことで「幽霊」とのニックネームを持つという。4年前に病気で亡くした長男の写真がプリントされたTシャツを身にまとい、気合いが漲っていることはリングサイドにいても十分に感じ取れた。

スロースターターの王者が、この日は先手で仕掛けた。

 だが挑戦者の不気味な気配も気合いも、王者のリードジャブが吸い取っていく。

 1ラウンド。

 従来なら立ち上がりはスロースターターらしく相手の出方を見て、中盤以降にギアを上げていくというストーリーなのだが、この日の王者は先手を取ろうとした。まさに「先」にある「手」で。

 ジャブ、ジャブ、ジャブ。

 小気味いいリズムあるジャブと「自分のボクシングは足が生命線」という軽いステップワークを組み合わせて、自分の距離をつくり出す。出入りを多くして、相手が得意の右を打とうとするとバックステップを踏んで外していく。「幽霊」が止まったところに、内側からジャブを当て左ストレートでボディーを叩いた。

【次ページ】 「構えたときに、ジャブが一番有効やなって感じた」

<< BACK 1 2 3 NEXT >>
1/4ページ
関連キーワード
山中慎介
ディエゴ・サンティリアン

ページトップ