歴代ホームラン王と通底する、ミートの名手ぶり。

　実は私自身も、彼はもっとボールを体の中に呼び込んで、振り回すほど振り抜いていく打者なのだろうと考えていた。そして、そんな振り方を見てみたいと思っていた。

　いくら逸材だって、入ったばかりの春だ。そんな、自分の都合で振り回した打球がスタンドに飛び込むほど高校野球は甘くない。

　私は、そんな振り方をした内野フライが見たかった。

　春がすみの青空の天中高く、溶け込んでしまうほどに舞い上がり、相手内野手が落下点に入りながらも見失ってしまう。

　そんな、とんでもない内野フライが見られるんじゃないか……と思っていた。

　その希望は叶わなかったが、「やっぱり、すごい！」と思わせてくれたのが、清宮選手の“とっさ力”、そしてミートの上手さだっだ。

　稀代のホームランバッターたちの多くは、ミートの名手たちである。これは野球界の黄金則といってもよい。

　王貞治をはじめ、歴代のホームラン王たちのほとんどが「打撃ベスト10」の常連であったり、3割前後の生涯打率を残している。

　つまり、パワーに技術が加わってはじめて「逸材」の称号を得られるわけだ。

　その資格の片鱗を、早稲田実業高・清宮幸太郎はその高校野球デビュー戦から見せつけてくれたわけだ。

首を振るくせ、痛そうな捕球音、静かなまなざし。

　だからといって、「2017ドラフト」が“清宮ドラフト”になるのかというと、なかなかそうはいかないだろう。

　野球はバッティングだけじゃない。

　野球には守ること、走ることもあって、いすれにしても清宮幸太郎選手、これからが猛勉強の季節になる。

　ちょっと左右に首を振りながらダグアウトに戻ってくるくせは、走りの得にはならないから直したほうがよいだろう。一方で、痛そうな捕球音を立てて、ファーストミットの芯でしっかり捕球するあたり、守備面にはよい習慣を持っているように見える。そして熱い思いと静かなまなざし。

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