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<バンディエラ対談・完全版> 小笠原満男×柳沢敦 「鹿島イズムとは、何だ」 

text by

松本宣昭

松本宣昭Yoshiaki Matsumoto

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photograph byDaisaku Nishimiya

posted2015/04/03 11:00

<バンディエラ対談・完全版> 小笠原満男×柳沢敦 「鹿島イズムとは、何だ」<Number Web> photograph by Daisaku Nishimiya

柳沢「勝ちきれないのは、何か問題があるはず」

――鹿島は'09年以来、リーグ優勝から遠ざかっています。「常勝」の時代と比べて、チームの印象に変化はありますか?

柳沢   去年までの情報は、満男からもある程度聞いています。

小笠原   ちょこちょこっとね。「去年はこうだったよ」とか、「この選手はこんな感じだよ」というのは話した。今のチームの半分くらいは、ヤナさんが知らない選手だよね?

柳沢   ほとんど知らないな。

小笠原   誰まで知ってるって言っていたっけ?

柳沢   ヤス(遠藤康)の世代まで。

小笠原   ヤナさんにとっては、ほとんどが「はじめまして」の選手だし、試合で対戦した時に見たことがある人、その試合にも出ていない人がいるので、「こういうタイプのプレーヤーで、こういう人間だよ」ってことをちょこちょこっと話したんです。

柳沢   去年までは、良いサッカーをしても結果が出なかったり、最後の最後で勝ちきれなかったり。そこには何か問題があるはず。世代交代が進んで、「経験がない」と言ってしまえばそれまでですけど、じゃあ、経験を得るにはどうするのか。やっぱり強かった頃の鹿島には強いメンタルがあったはずだし、今は、それが足りないのかもしれない。

小笠原「鹿島が強かった頃は、勝てる気しかしなかった」

小笠原   鹿島が強かった頃は、勝てる気しかしなかった。たとえ失点しようが、「絶対勝てる」という雰囲気がチーム全体にありました。やっぱり去年のチームは、シーズンを通して失点するとガクっときていた。特にアウェーで先に失点すると、立て続けに点を取られたり。優勝の可能性が残っていた最終節も、先に失点して慌ててしまった。そのへんはまだまだ力不足だと思う。それを「経験不足」と言ってしまえば、そうなのかもしれないけど、俺が一番感じているのは、強かった頃の鹿島には、みんなの中に競争心と向上心があった。例えばフィジカルを鍛えるランニングの練習でも、「あの人よりも絶対、前に出よう」という気持ちがみんなの中にあって、手を抜く人なんていなかった。ヤナさんはコーチとなった今でも、誰よりも汗を流すぐらい真剣にやっていますから。

柳沢   強い頃の鹿島には、個人にもチームにも良い意味で自信があった。それは決して驕りではなく、練習での積み重ねっていう裏づけがあってこその自信だからね。

小笠原   正直俺は、今の若い選手たちにそれを感じなくて。「これぐらいでいいや」って雰囲気というか。「鹿島は世代交代している」と言われるけど、まだまだポジションを与えられている状態。やっぱりこのクラブは、もっと競争しなきゃいけないし、向上心を持って、自分でポジションを取るんだって気持ちでやってほしいなと思う。それは俺が若い頃、身をもって感じたことだから。鹿島に加入した時に、そういう姿勢を一番見せてくれたのがヤナさんだったから。今年の宮崎キャンプで、ヤナさんがパス回しの練習に入った時も、何回もスライディングして、ボールを奪いに行っていた。あんまり取れてなかったけど(笑)。

柳沢   (笑)。俺、足もつったからね。

小笠原   そういうところだと思うんですよ。若い選手がそこまでやりきっているかといえば、そうじゃないと思う。試合に勝つ前に、まずはポジション争いに勝たないといけないし、強かった頃の鹿島は、フィジカル練習でもシュート練習でも、みんなが「一番になりたい」って気持ちが強かった。

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