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「今は自分の存在価値を証明したい」
長谷部誠が得た理想のポジション。 

text by

寺野典子

寺野典子Noriko Terano

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posted2015/03/20 10:40

「今は自分の存在価値を証明したい」長谷部誠が得た理想のポジション。<Number Web> photograph by AFLO

長谷部誠は、欧州でプレーする日本人の中でも屈指の安定感を誇る選手であり、過去10試合以下の出場で終わったシーズンは一度もない。

ユーティリティか、中盤での低評価か。

 右サイドのミッドフィルダーとしてプレーすることが多かったが、右サイドバックを務めることもあった。「ユーティリティな能力が評価されている」と言えば聞こえは良いが、サイドの選手としての評価しか得られていないともいえる状態が長く続いた。

「ヴォルフスブルクにいた5年半のうちで、中盤で本当に出られたというのは2シーズンとか、多分それくらい。それ以外はサイドの中盤だったり、サイドバックをやったりというのが長かった。ヴォルフスブルクは資金力のあるクラブなので、常に新しいライバルが加入してくる。選手個人のクオリティが高いチームでは、良いパフォーマンスができなければ試合には使ってもらえないし、ダメならまた新しい選手が獲得される」

競り合いや1対1でのフィジカルという課題。

 欧州の選手たちと比べると、どうしても日本人選手はフィジカル面で不利である。よって、激しいコンタクトのある中央のポジションを日本人に任せるのは躊躇われる。それは、ミッドフィルダーに限らず、フォワードもディフェンダーも同様。だから、サイドのミッドフィルダー、サイドバックとして頭角を現す選手がいても、なかなか中央で勝負できる選手は少なかった。

「自分が使ってもらえないというのは、技術的な部分や戦術的な部分で劣るというよりも、フィジカル的な部分に課題があると思っていた。ヘディングを競り勝つとか、1対1の戦いだったり。そういうところで他の選手よりも劣っていると自分自身でも感じていた。もちろん、サイドでもそういうフィジカルコンタクトはある。でも、真ん中に比べたらずいぶんと少ないから」

 クラブではサイドでキャリアを積み、代表では守備的ミッドフィルダーとしての任務を課される。同じサッカーと言えども、中央に立つのとサイドに立つのとでは、見える風景も違えば、ボールを受ける状況や仕事の質も違う。

 長谷部の代表でのプレー自体には進化を感じながらも、「クラブで守備的ミッドフィルダーとしてのキャリアを積んでいれば、もっと成長できたかもしれない」と、そう考えてしまうこともあった。ヴォルフスブルクでサイドでプレーしている姿が、じれったい印象を与えていたのは事実だ。

【次ページ】 「移籍をしてみて、初めてわかった部分でもある」

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長谷部誠
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