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鯉の“エース”黒田の立ち居振る舞いを見よ。
~マウンドで醸し出す独特のオーラ~ 

text by

石田雄太

石田雄太Yuta Ishida

PROFILE

photograph byTadashi Shirasawa

posted2015/03/20 10:00

順当に行けば開幕3戦目、3月29日のヤクルト戦(マツダスタジアム)での先発登板が決定的。

順当に行けば開幕3戦目、3月29日のヤクルト戦(マツダスタジアム)での先発登板が決定的。

 広島に黒田博樹が帰ってきた。3月8日、オープン戦の初登板を迎えたバリバリのメジャーリーガーは、5回ワンアウトまで、打者13人をすべてアウトに取った。まるでボクシングの如く軽快なテンポで効果的なパンチを繰り出し、1ラウンドを3分ずつで片づけていく。

 5回途中までに費やしたのは16分15秒、投げたのは39球。自在にボールを操った黒田は、一人あたり3球で13のアウトを積み重ねた。試合後、黒田は言った。

「どんどんストライクゾーンで勝負していって、バッターにプレッシャーを掛けていければいいかなと思ってました」

 40歳のシーズン、メジャーからのオファーを断ってカープで投げることを選んだ黒田に訊いてみたいことがあった。それは今回の“決断”に際して、“決めて断った”想いは何だったのかということだ。そんな問いに黒田はこう答えた。

「断ったことの一番は、そもそも自分がチャレンジしたいと思って行ったメジャーから、まだこんな評価をしてもらっているのに、こういう形でメジャーを切り捨ててしまっていいものかということでした。そこはすごく悩みましたね」

「カープのエース」と言った黒田のプライド。

 それでも黒田は今年、カープで投げることを選んだ。広島に育てられた彼にとって、ふたたびカープのユニフォームを着て燃え尽きることは、メジャーで投げることよりも重たい意味があったのである。思い出したのは以前、黒田にアテネ五輪やWBCの日本代表に選ばれた想いを訊いたときのこんな言葉だった。

「カープではエースでも、日の丸を背負えば中継ぎもやるし敗戦処理もやる。そこに日本代表の価値があると思います」

 驚いたのは、このとき黒田が自分のことを「カープのエース」と表現したことだ。僕はエースじゃないとか、みんながエースだとか、そんなふうに言いたがるピッチャーが多い中、黒田の言葉は新鮮だった。どんな役割を担おうとも揺らぐことのないプライドを感じさせる、エースの言葉――黒田はこうも言った。

「エースに必要なのは、立ち居振る舞いです。マウンドでの雰囲気とか、オーラというのは大事かなと思います」

 カープのエースの看板を背負うのは前田健太か、黒田博樹か。14も歳の離れた二人の立ち居振る舞いを交互に堪能できると思うだけで、胸が高鳴ってくる。

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