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ACLの“ルーズさ”を知り尽くした柏。
「予想通り」発言を裏付ける経験とは。 

text by

細江克弥

細江克弥Katsuya Hosoe

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photograph byJ.LEAGUE PHOTOS

posted2015/03/18 11:45

ACLの“ルーズさ”を知り尽くした柏。「予想通り」発言を裏付ける経験とは。<Number Web> photograph by J.LEAGUE PHOTOS

この試合の2得点すべてに絡む活躍を見せた輪湖直樹。柏ユースから甲府、徳島、水戸を経て昨年から柏のトップチームでプレーしている。

努めて冷静に振舞っていた柏の選手たち。

 MF武富孝介は「そんなことはないと思うんですけど」と謙遜したが、両チームのパワーバランスは試合開始直後の15分で明らかになった。

 現役ブラジル代表FWジエゴ・タルデリを含む主力3人を欠いた山東より、柏のほうが圧倒的に強い。

 実は、指揮官が言う「何回かのミス」は、この15分間にも起こっていた。

 DF鈴木大輔とMF茨田陽生のミスは相手にとって決定的なチャンスとなるが、いずれもGK菅野孝憲のファインセーブで失点を免れる。しかしこの2つのシーンでバランスを崩したのは敵地で一気呵成に攻撃を仕掛けた山東で、柏の選手たちはむしろ努めて冷静に振る舞った。むしろ、相手のバランスが崩れたことを確認し、反撃を試みる。

 吉田のコメントは、実は山東にも当てはまった。

「攻めれば攻めるほど空く危険なスペースがあって、ミスがあれば必ずつけ込まれる」

 2度のビッグチャンスに気を良くしたのか、本来なら2列目に位置するはずの山東のアタッカー、モンティージョが最前列に押し上げられる。結果として山東の最前列と中盤の間にはスペースが生まれ、柏はこの“バランスの崩れ”という相手のミスをしたたかに突いた。

 主導したのは、4-3-3のアンカーに位置した茨田である。

混乱した山東FWが、ベンチに叫んだ内容とは。

 まずは9分、このスペースでボールを受けた茨田が前を向いてボールを運び、前線にふわりとした球質のパスをフィード。相手守備陣の背後に飛び込んだ大津祐樹がボールをおさめ、最後はレアンドロがシュートを放ってCKを獲得した。

 この日初めて相手のペナルティーエリア内に進入した柏は、このプレーを機に一気にゲームの主導権を握る。

 11分には守備に乱れの生じた山東のミスから柏に決定機が生まれ、さらに12分には再び中盤のスペースでボールを受けた茨田がフィード。長い距離を走って飛び込んだ大谷秀和がボールを落とし、大津がシュートを放った。

 この直後、山東の最前線に位置するFWワン・ヨンポーがベンチに向かって何かを叫んだ。おそらくこう言ったに違いない。

「アイツ、誰が見るんだ!」

 アイツとはもちろん、茨田のことである。

【次ページ】 相手の急所をイヤらしく突いた理想的ゴール。

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