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「技術だけは、いつまでも錆びない」
玉田圭司の2得点に詰まった“技”。 

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西川結城

西川結城Yuki Nishikawa

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posted2015/03/18 10:45

「技術だけは、いつまでも錆びない」玉田圭司の2得点に詰まった“技”。<Number Web> photograph by J.LEAGUE PHOTOS

今年からセレッソに移籍した34歳の玉田圭司。全盛期のスピードは流石に見られないものの、前線での存在感と決定力は健在だ。

「技術だけは、いつまでも錆びない」

「大宮はセレッソと同じでJ2に降格してきたばかりだから、守り一辺倒ではなく対等に戦ってきた。だからゴール前でのパスワークで崩す場面を作らないといけなかった。関口のああいうパスと自分の動き出し。これが今後も続けば、どんどん崩せると思う。もちろん、自分がパスの出し手にだってなることもできるから」

 同じようなゴールシーンが、今季どれだけ見られるか。その継続こそが、玉田というテクニシャンの存在価値にもなる。

「テクニックは年齢やフィジカルに関係ない。技術だけは、いつまでも錆びない」

 名古屋を去る時に、玉田が残した言葉である。このゴールは、彼の自信と意地の一端が垣間見えた瞬間だった。

 土壇場で雨の長居に歓喜をもたらしたFKにも、ある工夫が施されている。

 玉田は普段、鋭く曲がるFKを蹴ることが多い。しかし今回は、キックのインパクトがいつもと少々違って見えた。ボールをこすり上げるよりも、足を長く接地させ、押し出すような蹴り方だった。

「インサイドで巻くのではなくて、少しインステップに近いインフロントというのかな。ゴールまでの距離があった。新聞には25mと書かれていたけど、もっとあった。30m弱かな。雨も降っていて滑るし、自分もほぼ90分プレーし続けていたから、曲げて蹴ろうとした時に力が入らなくて壁に当ててしまうかもしれないと思って。もう何本も蹴ることが出来ない時間帯で、あの一発しかなかった。だから距離を考えて、速くて伸びていくようなボールを蹴ることにした」

 はたして、ボールはゴールの中へ。「自分の判断を信じた」結果の一撃。ここにも、“技術屋”だからこそできる微調整が隠されていた。

「活躍? 普通だよ、これぐらい(笑)」

 勝利から一日経って、玉田は少し冷静に振り返った。

「活躍? 普通だよ、これぐらい(笑)。セレッソではこれからもっとやらないといけない。新天地でずっと点が取れなくて悶々とすることだけは嫌だった。早くチームに貢献したかった。FKと連係からのゴール。2つとも自分らしい形だったし、何より名古屋で良かった時にいつも決めていたパターンでもあったから、理想の形でスタートを切れた。まだリーグは長いからね、J2はタフだし。でも、自信はいつだってある。それは変わらない」

 たこ焼き屋巡りだけではない。大阪、関西には良いところがまだまだたくさんある。

 縁もゆかりもなかった土地・名古屋での9年間を、玉田は「財産」という。それは何より、彼がキャリアで最も充実した日々を過ごしたから。きっと、セレッソで再び輝けば、玉田は大阪を益々好きになるだろう。単純でわかりやすいかもしれないが、それがいつだって“サッカーに素直な”玉田という男の、シンプルでプラスな思考なのである。

 これまでのキャリアで、黄色、青色、赤色と変遷してきたゲームシャツ。セレッソでは、まだ1試合で活躍しただけ。それでも甘いフェイスのレフティは、すぐに桜色のシャツも着こなしてくれるはずだ。

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