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マーリンズの不思議。
~年俸総額の急激な増減~
text by

小川勝Masaru Ogawa
photograph byGetty Images
posted2015/03/18 10:10

メジャー15年目のシーズンを迎えたイチロー。過去14年で2844本のヒットを放っている。
イチローの新天地はマイアミ・マーリンズに決まった。マーリンズは、米大リーグ全30球団の中でも、日本人選手がプレーするのはイチローが初めてということもあって、日本の野球ファンに馴染みの薄い球団だと言えるだろう。歴代成績と観客動員から、このチームの特色について考えてみたい。
創立22年、ワールドシリーズで2度制したが……。

マーリンズは1993年に創設され、球団の歴史はまだ22年、その成績を見ていくと、なかなか興味深いものがある。プレーオフに進出したのは22年間で1997年と2003年の2回だけだが、いずれも地区2位、ワイルドカードだった。しかしその2回のチャンスで、いずれもワールドシリーズで優勝しているのである。地区優勝をしたことはないが、ワールドシリーズ制覇は2回というわけだ。
この22年間に関して言えば、ワールドシリーズで2回以上優勝しているチームはマーリンズのほかにレッドソックス、ヤンキース、ジャイアンツ、カージナルスだけ。そう考えると大した成績だが、マーリンズの場合、それ以外のシーズンとのギャップが大きいのである。そのギャップの大きさが球団の特徴と言っていいのかも知れない。
世界一になった翌シーズン、54勝しかできなかった。
22年のうち16年で勝率が5割を下回っている。ワールドシリーズで優勝した年以外で、プレーオフ進出をぎりぎりまで争ったのは、貯金12で地区2位になった'09年だけと言っていいだろう。すでに11年連続してプレーオフ進出を逃している。
中でも注目しなければならないのは、ワールドシリーズを初めて制覇した翌年、'98年は54勝しかできず、両リーグを合わせても最下位の成績に終わっているという事実だ。なぜ、これほど成績が下がってしまったのか。'97年の優勝に貢献した115打点のモイゼス・アルー、16勝のケビン・ブラウン、35セーブのロブ・ネンといった高給のスター選手を次から次へとオフにトレードで放出してしまったのである。