錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER

なぜ錦織圭は逆境でこそ輝くのか?
異国での修行で磨いてきた2つの力。  

text by

山口奈緒美

山口奈緒美Naomi Yamaguchi

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photograph byHiromasa Mano

posted2015/03/16 17:00

なぜ錦織圭は逆境でこそ輝くのか?異国での修行で磨いてきた2つの力。 <Number Web> photograph by Hiromasa Mano

チャン・コーチからはいつも「Believe yourself(自分を信じろ!)」と言われている錦織。チャン・コーチの高度な作戦が実行できるのも、錦織の類まれな能力のなせる業だろう。

錦織が克服したもう一つの“敵”とは?

 もう一つ錦織が克服したものは、アウェーという敵だった。当然ながら日本のファンの前で圧倒的なサポートを受けて戦った過去の14試合と、今回は違った。5000人収容の会場は満員というわけではなかったが、ブラスバンドも加わって楽器を打ち鳴らす応援は隣の席の叫び声もかき消す音量だ。通常テニスでは、贔屓の選手がいても、その対戦相手のミス、ましてやダブルフォルトなどで手を叩かない、喜ばないというのが観戦のマナーだが、デ杯にそのマナーは通用しない。

 しかし、やりにくくなかったかと問われた錦織は、ニヤリと笑って答えた。

「自分を応援してくれていると思うようにしていました。なので、大変でしたけど、アウェーでも楽しめました」

 自分のミスに手を叩かれても、それを頭の中で「錦織、がんばれ!」という激励に変換して、次のポイントへ向かっていた。シンプルなことのようだが、同じようにやればいいと言われても、簡単に真似はできない。錦織のテニスに通じる豊かな発想力・想像力がそんなところでも発揮されるのだろうか。13歳から異国で一人がんばる中で、無意識のうちに磨いてきた才能なのかもしれない。

秘策については「特に何も考えてないです」。

 さて、現在開催中のインディアンウェルズ・マスターズはハードコートだが、錦織は相性が良くない。空気が乾燥しているために、ボールがよく飛び、よく弾む。抑えがきかず、ウィナーもなかなかとれない。

「まだ慣れていないし、簡単にウィナーがとれない。わかっていても、いつもの自分のテニスができないと少しイライラもしてしまいますし、ここならではの戦い方が必要になってくると思います」

 初戦となる2回戦を突破したあと、そう話した。確かにミスも多く不安定だったが、今回こそこの苦手なコートを克服できるのか。

 秘策については「特に何も考えてないです」と言ったが、本当だろうか。

 相性のいい大会とは別の意味で、楽しみだ。

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