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U-22を支えるマイアミの奇跡の1人。
秋葉忠宏、「ひたすら喋る」コーチ術。 

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戸塚啓

戸塚啓Kei Totsuka

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photograph byGetty Images

posted2015/03/14 10:40

U-22を支えるマイアミの奇跡の1人。秋葉忠宏、「ひたすら喋る」コーチ術。<Number Web> photograph by Getty Images

昨年はザスパクサツ群馬を率い、J2で18位と監督業の難しさを味わった秋葉忠宏。手倉森体制で、その経験は絶対にチームにプラスになるだろう。

「選手のくすぐり方も、僕らのころと違いますから」

 もうひとつ付け加えれば、彼が戦ったアトランタ五輪アジア最終予選は、今回のリオ五輪1次予選と同じマレーシアが舞台だった。試合が行なわれるスタジアムも同じである。

「何だか因縁めいたものを感じますねえ」と、秋葉も口もとをほころばせる。

「練習で使うグラウンドも、宿泊するホテルも当時と同じだそうで。セントラルの予選を経験しているから、誠さんに声をかけてもらったのは絶対にある。そのあたりは、必要に応じて選手に伝えていければと思っています」

 とはいえ、経験を押しつけたりはしない。選手とのコミュニケーションを一方通行にしないのは、水戸ホーリーホックやザスパでの指導者経験が生かされているのだろう。

「時代って流れていて、日本が置かれている立場も選手の質も、僕らの現役当時とは違います。そのなかでもいま現在とリンクすることや、これは伝えておいたほうがいいな、ということは選手たちに話していきたい。

 選手のくすぐりかたも、僕らのころとは違いますからね。一人ひとりに合ったくすぐりかたを見つけて、スタッフを含めたチーム全員がひとつになって目標に向かっていく、勝利に向かっていく。チームの輪というかファミリーというか、絆を深めていくことが大事だと感じています。一体感のあるチームは、ものすごい力を発揮します。アトランタ五輪予選を戦った僕らのチームも、一体感はすごくありましたから」

 トレーニングでは、絶えず声を張り上げる。「自分たちで声を出して、雰囲気を作っていこう!」といったチームの士気を高めるメッセージから、「パスは各駅停車になるなよ! そうそう、ノッキングさせるな」といった具体的な指示まで、秋葉の声が途切れることはない。

岩波拓也「ひたすら喋ってますからね」

 手倉森も頬を緩めて頷く。

「明るいキャラクターだからね。アイツがまだチームにいないときは、オレが一番元気ですねと言われていた。それも、すっかり言われなくなったな」

 秋葉について聞かれると、選手たちの表情もやわらぐ。センターバックの一角を担う岩波拓也(ヴィッセル神戸)は、「ひたすら喋ってますからね」と笑顔を浮かべた。

「あんまり喋る選手が多くないので、ありがたいっすね。喋ってない姿を見たことがないくらい喋ってるんで。たまにちょっと、うるさいときがありますけど」

 最後のひと言は、親しみの表れだろう。オンとオフでスイッチを切り替え、チーム内の空気を巧みに循環させる秋葉の姿がにじむ。

【次ページ】 「ときにはバカになることも大事じゃないですか」

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