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中村憲剛「カンプノウみたい」。
迫力と便利が両立の新等々力競技場。 

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飯尾篤史

飯尾篤史Atsushi Iio

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photograph byKAWASAKI FRONTALE

posted2015/02/27 10:30

中村憲剛「カンプノウみたい」。迫力と便利が両立の新等々力競技場。<Number Web> photograph by KAWASAKI FRONTALE

そもそもは1941年の内務省の等々力緑地の都市計画に基づき、整備中の等々力緑地内に1964年より陸上競技場の建設が開始され、1966年より供用を開始していた。

さらに大きな目玉、6種類のバラエティシート。

 さらに大きな目玉となりそうなのが、各種バラエティシートの存在だ。

 子どもを目の前で遊ばせながら観戦できる「ファミリーシート」、食べ物や飲み物、パソコンなどを広げられる「テーブルシート」、友だちや団体など複数人で使用する「グループシート」「パーティーシート」、ふたり一組で使用する「ペアシート」、フィールドレベルで観戦できる「ピッチサイドシート」の6種類がある。

 バラエティシートと言えば、日本国内ではプロ野球、広島カープの本拠地、MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島が有名で、岩永氏はもちろん、多くのクラブスタッフが広島まで何度も足を運んで参考にしたという。

 また、ファミリーシートは岩永氏がドイツを訪ね、ヴォルフスブルクのフォルクスワーゲン・アレナを視察したうえで取り入れた。

「やっぱり親の立場からすると、子どもが視界に入らないのは不安ですよね。視野の中で子どもが遊んでいれば、安心感が全然違うと思うんです」

ファンの目線を考え、あえて下層スタンドの傾斜を緩やかに。

 各種バラエティシートは、シーズンチケットが販売されていないため、1試合ごとに購入する必要がある。ちなみに3月14日、ヴィッセル神戸とのホーム開幕戦のバラエティシートは発売したその日のうちに完売してしまったという。

 新メインスタンドは下層と上層のふたつのスタンドに分かれている。中村を驚かせた上層スタンドと比べ、下層スタンドの傾斜は緩やかで、一見サッカー観戦に適さないように思われる。だが、そこにはフロンターレのファン層と好みがしっかりと反映されている。

「うちの場合、近所のおじいちゃん、おばあちゃん、小さいお子さん連れの若い夫婦、自転車でやって来る子どもたちが多い。そういう方々は、傾斜のある階段を昇り降りするのは大変なので緩やかにしようと。それにうちは、傾斜が緩やかなゴール裏とバックスタンドの1階席も人気があるんです。選手と触れ合えるし、選手と同じ目線で、一緒に戦う雰囲気を味わいたいということで」

 そこで「選手の目線と同じ」「階段が苦にならない」「選手と近い」といった条件を満たせるように、あえて緩やかな傾斜を採用したのだ。

 もっとも、等々力には陸上トラックがあるため、「選手に近い」という点に関しては、どうしても限界がある。そこで生まれたのが、可動スタンドというアイデアだ。

 さすがに全面を可動させるわけにはいかなかったが、向かって右側の下層部は「ピッチサイドシート」と名付けられ、新メインスタンドの最前列より5.5メートルほどピッチに近づけるようになっている。

【次ページ】 参考にしたのはスタッド・ドゥ・フランス。

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