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巨人・大田泰示は真の4番になれるか。
落合博満、松井秀喜の「インハイ論」。 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2015/02/24 12:20

巨人・大田泰示は真の4番になれるか。落合博満、松井秀喜の「インハイ論」。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

春季キャンプでの練習試合では、4番・中堅のスタメンとしても数字を残している大田。毎年のように期待される「覚醒」が、今年は実現するか?

 元ニューヨーク・ヤンキースの松井秀喜さんが巨人に入団した1993年のオフに、今度は中日から落合博満現中日GMがフリーエージェントで移籍してきた。

 それから落合GMが退団するまでの3年間、二人の間では、事あるごとにバッティング談義(と、いうより落合GMが一方的に松井さんにいろいろな打撃の話をしていたという方が正確かもしれないが……)が繰り広げられた。

「今までいろいろな人からいろいろバッティングの話を聞いてきたけど、一番、納得できるのは落合さんの話だった」

 そのことを後に松井さんはこう振り返っている。そして中でも印象に残っている話として挙げるのは、最初に言われたこんな話だったという。

「インハイを何とかできるようにしろっ! インハイがバッターにとって一番、時間のないところだから、そこを何とかできれば、他はどうにでもなる」

 この話を聞いて松井さんはこう思った、という。

「いや、落合さん! それが一番、難しいじゃないですか!」

 落合GMの話はいつもこうだった。

「分かるけど、難しい。落合さんだからできるということがとても多かった。でも、そうやって教えてくれることはすべて理にかなっていて、それができないと結局はダメだということだったんです」

 このときのインハイの話も、まさにその通りのことだった。

落合が松井に伝えた「インハイ」に対する強烈な意識。

 打者が内角球をさばくには、ポイントを前にして回転で打たなければならない。外角球は多少、ポイントを後ろに置いてその分だけボールを長く見られるし、反応にも余裕がある。しかし「打者にとって最も時間のないところ」がインハイで、それだけ速い反応速度とコンパクトなスイング、腕を短く使って体の回転で振り抜く技術を求められる。

 もちろん実際に打席に立てば、真っ直ぐも変化球もある。相手バッテリーは内外角を巧みに使って打者を揺さぶるのだから、インハイばかりを意識するわけにはいかない。

 ただ打者にとって最もやっかいな内角高めのボールを偶然や狙ってではなく、自然な形の中で打ちこなせるか、少なくともファウルにできる技術を身につけなければ、結局は投手との勝負には勝てない。それが落合GMが松井さんに伝えたかったことなのである。

「これから相手の攻めがどんどん厳しくなってくるからね。まだまだ。そこからが本当の勝負でしょう」

 巨人の原辰徳監督が、こう言って鋭い視線を向けたのは、このキャンプで覚醒が話題となっている大田泰示外野手だった。

【次ページ】 なぜ原監督は「今年こそ大田」なのか?

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