テニスPRESSBACK NUMBER

なぜ錦織圭の目に濃い“くま”が?
3連覇の陰で進んでいた「強化計画」。 

text by

秋山英宏

秋山英宏Hidehiro Akiyama

PROFILE

photograph byAFLO

posted2015/02/17 11:20

なぜ錦織圭の目に濃い“くま”が?3連覇の陰で進んでいた「強化計画」。<Number Web> photograph by AFLO

インタビュアーにも、観客にも3連覇を祝福される錦織圭。調整と大会での結果、メンフィスの地で得た2つのアドバンテージは、メジャーに挑む大きな足がかりとなる。

今季は、第1セットを落とした試合で5勝1敗。

 そして、接戦には滅法強い。熱心な錦織ファンにはおなじみの、“あのデータ”を紹介しておこう。この大会を含め、試合が最終セットにもつれた時の通算勝率78.9%は歴代1位、過去52週では19勝2敗で、勝率は90.5%まで跳ね上がる。もちろん現役選手でトップの数字である。

 また今季、錦織は第1セットを落とした試合で5勝1敗と大きく勝ち越している。競った試合に強い錦織は、今や“逆転の錦織”でもある。準決勝の試合後のコメントから、その秘訣を探ることができる。

「1セット目を取られても、なるべく集中力を切らさず、なるべくネガティブにならず、ひとつのチャンスを待った。(相手に先行を許す)逆境だったが、集中して戦えた」

 心がへし折られるような場面が続いてもあきらめず、苦しい状況で、より集中を高める。クエリーとの苦闘を制した要因がまさにそこにあった。

 一度死んで生き返った、と見るべきなのか、決勝での錦織は別人のような出来だった。「これまでと違ってミスも少なく、リターンもよかった」と錦織。相手のサービスゲームを3度ブレーク。読みがピタリと当たり、アンダーソンが203cmの長身からたたき込むサーブをはじき返した。相手のセカンドサーブでは、錦織の得点率は62%に達した。

 試合時間1時間16分のストレート勝ち。連覇の重圧、すなわち1年前に獲得したランキングポイントをディフェンド(防衛)する重圧との戦いを制した錦織が、大会3連覇を飾った。

フィジカルトレーニングと並行しての大会。

 それにしても、これだけ苦しい戦いになったのはなぜか。準決勝までは明らかに体の切れが悪かった。その試合後の会見では「3戦ともタフな試合を強いられ、少し疲れている」と話した。見るからに疲労困憊の様子で、試合をこなすたびに目の下のくまが濃くなった。

 WOWOWで準決勝、決勝を解説した坂本正秀氏は放送の中で、錦織が大会前、そして大会期間中もフィジカルトレーニングで「かなり追い込んだ」ことを紹介した。一般的には、大会前や期間中は負荷を下げてトレーニングを行なう。しかし、錦織は今後のシーズンを見据えて、しっかりトレーニングをこなしながら試合に臨んだというのだ。

【次ページ】 賭けに勝ち、今後は状態が上向く確信が。

BACK 1 2 3 NEXT
錦織圭
ケビン・アンダーソン
サム・クエリー

テニスの前後の記事

ページトップ