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日本を飛び出すスポンサー企業たち。
男子ゴルフに必要な“内から外”。 

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桂川洋一

桂川洋一Yoichi Katsuragawa

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posted2015/02/12 10:30

日本を飛び出すスポンサー企業たち。男子ゴルフに必要な“内から外”。<Number Web> photograph by AFLO

2014年には2度目のマスターズ制覇も果たしたバッバ・ワトソン。日本にこのレベルのスターたちが来日する機会が増えれば、観客動員数も確実に向上するのだが……。

ワトソンのシャツにエアウィーヴのマークが無い理由。

 ところで、スコットのシャツにはユニクロのお馴染みの赤いロゴが刻まれているが、ワトソンは、ウェアやバッグにエアウィーヴのマークはない。その理由を高岡社長は「うちはまだアメリカに販売店がない。我々がバッバみたいにビッグネームになってから、話をしたいと考えています」と話した。確かに、米国で販売網を整備できていない段階では、ワトソンを見て現地の消費者が興味を持ったとしても、彼らの要望に応えるのは難しい。

 そうなるとスポンサー契約の広告効果について首を捻りたくもなるが、将来的なビジョンは頷けるものだ。同社が今後、海外進出を推し進めるにあたり「バッバ・ワトソンと契約している会社」であることは商品への信頼にもつながる。契約選手がビッグネームであればあるほど、その土地での“通行手形”、“名刺代わり”としての価値は高くなるというわけだ。

 今を時めく松山英樹が所属契約を結ぶトヨタ自動車のレクサスブランドは、以前からアニカ・ソレンスタム、ジェイソン・デイら数々の外国人選手と、海外の現地法人が契約を交わしてきた。松山も、その実績を経たグローバル契約だ。海外展開が盛んな日本のブランドが待ちに待っていた、世界で戦う和製ゴルファーだったというわけだ。

 こうして見ると、日本企業のプロゴルファーへの投資活動はいまも盛んである。

タイガー騒動以来、選手の個人スポンサーは縮小傾向。

 実は、これは世界的に見れば珍しい傾向だ。世界的には、選手個々へのスポンサー契約自体は縮小の流れなのだ。発端は2009年末に勃発したタイガー・ウッズの大スキャンダル。不倫の事実が公となった当時、AT&T、アクセンチュアなど多くの企業ブランドが撤退し、いまもそれを引きずっているという。

 プライベートな問題だけでなく、選手個々の成績の浮沈は誰も予想がつかない。故障離脱する可能性も常にある。そういった意味で、イメージ低下のリスクが低いのがトーナメントの試合への出資だが、こちらにおいても積極的な日本企業がある。

 4月にカリフォルニアで行なわれる米女子メジャーの初戦は、新たに全日本空輸が冠スポンサーになった。昨年までのクラフトナビスコ選手権に代わり、ANAインスピレーションとしてリニューアルしたのだ。歴史が深く、将来に語り継がれるメジャースポンサーの名を博しただけでなく、米女子ツアー(LPGA)の公式エアラインとしての役割も担うことになった。

【次ページ】 日本男子ツアーの問題は、海外への発信チャンネル。

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