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<アスリートの体幹論> 理論と実践から読み解く、驚愕の“バレリーナの体幹”。 ~
ダンサー・川口ゆい~ 

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NumberDo編集部

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2015/02/10 11:30

<アスリートの体幹論> 理論と実践から読み解く、驚愕の“バレリーナの体幹”。 ~ダンサー・川口ゆい~<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama
滑らかなラインを描く体でありながら、強靭な構造を秘め持つ。
専門家も驚いた、スポーツ選手に匹敵するバレリーナの体幹とは。

好評発売中のNumber Do『欲しい体を手に入れる体幹論』より、
世界的ダンサーの“体幹力”を東大教授が分析した記事を公開します!

 体幹の強さは、スポーツ選手だけに限られたものではない。筋力トレーニングの方法論にかんする第一人者である東京大学教授・石井直方さんは、以前、バレリーナの体幹の強さに驚愕したという。国内外で活躍するコンテンポラリーダンサー・川口ゆいさんは、かつて習得したバレエの方法論に、近年また回帰してきていると話す。理論と実践、その両方からバレエの体幹に迫ってみた。

「10年以上前なんですが、テレビの科学番組でバレリーナの動きや筋肉について特集したいと依頼があり、プロの女性お二方のMRI画像を撮ってみたことがあるんです。その画像が大変印象的でした。陸上の投擲や、スプリントのトップアスリートに匹敵するような体幹を備えていたんです。腕や肩、胸に筋肉がついてしまうとゴツゴツした体型になるわけですが、その辺りの筋肉はさほどついていない。しかし体幹を中心とした筋肉には目を見張るべきものがあり、以来よくバレリーナの体幹について話すようになりました」

「ウエストが細いのに“箱”となる筋肉が分厚い」

 自身もボディビルダーである石井さんは、“見せる芸術”としてのフォルムを保ちながら、体幹を中心に強靭な筋力を蓄えているバレリーナの画像に魅入られたという。誰もが憧れる体でありつつ、驚異の体幹を携えているバレリーナの体について語ってくれた。

「体幹というのは、上は横隔膜、下は骨盤底筋で区切られるんですが、その間は背骨以外に骨はなく、内臓があるだけで支えが殆どない空間なんです。その周りを腹筋群や脊柱起立筋などの背筋群が取り囲んでいるわけですが、体幹が強いというのは、そうした“箱”の構造がしっかりしているということを意味するんです。バレリーナはこの“箱”を成り立たせる筋肉が、ウエストは細いのに非常に分厚い。

 特に、お腹の中で背骨に沿ってついている大腰筋が、一般女性の2倍以上は太い。単純に体幹を保持する以外に、太腿を前に上げる際にも使われる筋肉です。体幹の重要な一要素である筋肉が、同時に体幹の外に対して使われる筋肉でもあるわけで、体幹の力が外に対して連動して伝わるようにもなっているわけです」

 アスリート並の体幹を備えているバレリーナ。なぜそのような強靭な構造を身につけられているのだろうか。

【次ページ】 “つま先一点立ち”が体幹の強さを象徴する理由。

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川口ゆい

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