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アジアの勢力図を変える、ラウールの“遺産”。
~急成長する“中東版カンテラ”~ 

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豊福晋

豊福晋Shin Toyofuku

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posted2015/02/10 10:30

アジアの勢力図を変える、ラウールの“遺産”。~急成長する“中東版カンテラ”~<Number Web> photograph by AFLO

2012年にカタールのアル・サッドに移籍。4月からは米国2部のNYコスモスでプレーする。

 アジアカップでの日本の早期敗退を見ても分かるように、中東勢の間で日本に対する苦手意識は薄れつつある。日本もそのテクニックに苦しんだUAEのオマル・アブドゥルラフマンを筆頭に、中東にも欧州のビッグクラブが狙う若いタレントが生まれつつあるからだ。

 UAEの隣国カタールも2022年ワールドカップ開催を見据え、若手を強化する国家的プロジェクトを進めている。それが『アスパイア・アカデミー』だ。

 同アカデミーは8歳から18歳までの能力の高い選手を厳選し集中的に強化。施設内には学校や宿泊設備もあり、選ばれた選手たちは平日そこで練習し、週末に所属クラブで試合を行なう日々を送る。

 指導者のレベルも世界トップクラスだ。特にスペインとの結びつきが強く、元レアル・マドリーのフィジカルコーチ、ワルテル・ディサルボらが最先端のテクノロジーを駆使して選手を育成している。

FWにはラウール独得の動き出しを直接指導したことも。

 計画の一翼を担うのが今年から米国でプレーするラウール・ゴンサレスだ。

 彼はドーハでプレーしていた頃、朝9時に練習場に現れては子どもたちのプレーを見て指導し、コーチ陣の練習メソッド研究のミーティングにも参加していた。

「特にフォワードにはつきっきりで独得の動きを教えていた。ラウールがいることで選手と指導陣にもいい緊張が走った」とサンチェス・バス監督は言う。

 昨年10月にミャンマーで行なわれたアジアU-19選手権でカタールは優勝したが、その際もラウールは現地に赴き、近くからサポート。スター選手の献身的な姿勢は優勝の隠れた要因だった。

 カタールでのラウールを見ていて思い出されるのは、ジーコがサッカーの底上げに貢献した'90年代初頭の日本だ。世界的スターにあらゆる面で刺激を受けた日本はそこから急激にレベルを上げ、アジア杯では毎回優勝候補に、W杯も出場して当然という立ち位置を築いた。

 ラウールとアスパイアの成長を見ていると、彼らのサッカーがかつての日本のように右肩上がりとなるのは間違いない。ディレクターのロベルト・オラベは「まず中東のトップになり、その後アジアの頂点に立つ。W杯は参加だけでなく主役になりたい」と言う。数年後、東に偏っているアジアサッカーのパワーバランスは形勢逆転となっているかもしれない。

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