変化に抗うのではなく、いかに対応していくか。

　そもそもヒクソンが、バーリ・トゥードをスポーツ化した先駆者だった。なんでもありといえば素手というイメージが強かった時代にオープンフィンガーグローブ着用の『バーリ・トゥード・ジャパンオープン』に出場。船木戦では頭突き、ヒジ打ち禁止のルールを主張している。

　格闘技に限らず、何事も変化していく。それに抗うのではなく、いかに対応していくか。グレイシーとしての、柔術家としての誇りさえ失わなければ、変化を恐れることはないというのがヒクソンの流儀なのだろう。

今回沖縄でキャンプを行なった理由とは？

　試合前に“山篭り”をすることでも知られるヒクソンだが、クロンは試合前に沖縄でトレーニング・キャンプを敢行している。

「冬だから、暖かくて海のある沖縄にしたんだ。海であれ山であれ、大事なのは自然の中でトレーニングすること。自然と自分の心をアダプトすることで、集中力が養われるからね」

　自然とつながる心。言い換えるなら精神の柔軟なフットワーク。足にフィットする履き込んだランニングシューズは、その象徴のようにも思えた。

　12月23日、クロンは一本勝ちでデビュー戦を飾った。その試合を「今日に関して言えば100点。でもこれからも同じことができるかどうかは分からない。大事なのはずっと本気で努力し続けることだよ」と評したヒクソン。息子の勝利を喜びつつ、先を見据えた発言をした父の足元は、やはりニューバランスだった。