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<独占インタビュー> 小林可夢偉 「今年1年走って悔いはない」 

text by

今宮雅子

今宮雅子Masako Imamiya

PROFILE

photograph byNaoya Sanuki

posted2014/12/18 11:30

これが最後のF1になるかもしれない――。
そう思って走った最終戦のアブダビGP。
今季はチームの資金難に悩まされたが、
それでも彼は笑顔を絶やさなかった。

 最終戦アブダビGPのレース後、小林可夢偉はケータハム・チームのメンバーと一緒に、2014年シーズン最後の写真におさまった。

「思い出も大事じゃないですか。僕ら、何かかたちになるためにアブダビに行ったようなもんやからね」

 笑顔は“ありがとう”という気持ち。可夢偉は共に戦ったチームやファンへの感謝の言葉とともに、写真をフェイスブックに載せた。

 簡単なシーズンではなかった。資金難に見舞われたチームでは7月上旬にオーナーが交替。それでも財政は悪化するばかりで10月下旬、チームの運営は管財人の手に委ねられた。したがって第17戦USGPと第18戦ブラジルGPは欠場……可夢偉のシーズンも、そこで終わってしまうはずだった。マシンの安全性に疑問を抱きながら走った後では、レースへの強い気持ちも失せていた。

「最後になるかもしれへんから思いきり、走ろうかなと」

 しかし管財人フィンバー・オコンネルは、クラウドファンディングを利用してアブダビGPに出場する資金を募集すると発表。この手法はF1界でもファンの間でも議論を呼んだが、管財人にとっては'15年の出場権を維持して新しいオーナーを探すための唯一の方法だった。そして彼は、アブダビ行きの資金を調達することに成功。可夢偉は、チームの要請に応えてレースに出場することを受け入れた。一度は、もう一緒に走ることはないと決めていたチームなのに――。

「僕にとってもこれが最後のF1になるかもしれへんからね」

 ヤスマリーナの煌びやかな照明を背中に受けながら、可夢偉はポツンと言った。

「思いきり、走ろうかなと思って」

【次ページ】 最終戦、バトンが驚くほどのタイムをたたき出した。

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