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重圧も骨折もはね除け、優勝を掴んだ鈴木博昭の覚悟。
~シュートボクシング界の“怪物くん”~ 

text by

布施鋼治

布施鋼治Koji Fuse

PROFILE

photograph bySusumu Nagao

posted2014/12/13 10:30

「ラストチャンスだと思って臨んだ」と語った鈴木。最後まで諦めずTKO勝ちを収めた。

「ラストチャンスだと思って臨んだ」と語った鈴木。最後まで諦めずTKO勝ちを収めた。

 1回戦で足の指が2本も折れていたにもかかわらず、その異変に気づいたのは準決勝の試合中だった。それだけ副腎からアドレナリンが分泌されていたということか。立ち技総合格闘技シュートボクシング2年に一度のビッグイベント「S-cup 65kgワールドトーナメント2014」(11月30日・両国国技館)は、鈴木博昭の優勝で幕を閉じた。

 マッチョな身体とこの階級では規格外のパワーで“怪物くん”と呼ばれる存在だ。だがそれはウエートで作ったものではない。打撃、投げなどシュートボクシングの技術をジムワークで磨いているうちに培ったマッスルなのだ。周囲の期待に応えるように、昨年11月のS-cup日本トーナメントでは見事優勝を果たした。

 しかし、今年になってから調子は今ひとつ。勝ち越しているとはいえ、内容が伴わない。6月にRISE王者のイ・ソンヒョンと激突すると、痛恨の判定負けを喫してしまった。エースの看板を背負わされた重圧から守りに入ってしまい、それが裏目に出たのだろうか。

手負いの状態でも、再延長までもつれた決勝を制した。

 果たして1回戦の入場時は、今大会に進退をかけていた宍戸大樹への声援の方が大きかった。信用されていないという現実を払拭するためには、観客が納得する形で勝ち進んでいくしかない。初戦でムエタイの実力者ポンサネーを手負いの状態ながらハイキックからのワンツーで完全KOする姿には、鈴木の覚悟を感じずにはいられなかった。準決勝でぶつかったのは昨年12月にGLORYで久保優太を下しているモサブ・アムラーニだったが、持久戦に持ち込んで接戦を制した。

 もう一方のブロックから勝ち上がってきたのは、欠場選手の穴を埋めるために大会当日朝に滑り込みで来日したという弱冠20歳のザカリア・ゾウガリー。ザカリアとは今年4月に地元愛知で初対決し、薄氷の勝利を収めている。この日は初戦、準決勝とも自分より格上の相手をいずれもKOで下しているこのモロッコ人は、さらに力をつけ襲いかかってきた。

 本戦3Rまではザカリア、延長戦は鈴木優勢という流れの中、勝負は再延長戦へ。お互い傷だらけの状態だったが、ここで鈴木がパンチのラッシュを仕掛け、熱戦に終止符を打った。足を引きずりながら、控室まで戻ってきた鈴木は呟いた。

「この日のために生きてきました」

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