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不変の軸と、開花したリーダー性。
侍J、SBの中心に松田宣浩がいる。 

text by

田口元義

田口元義Genki Taguchi

PROFILE

photograph byNaoya Sanuki

posted2014/12/09 10:50

不変の軸と、開花したリーダー性。侍J、SBの中心に松田宣浩がいる。<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

今季は怪我で離脱したものの、最終的に101試合に出場し、打率も3割をキープした松田宣浩。日米野球でも唯一敬遠されるなど、強烈な存在感を放った。

松田の離脱に、チームが奮起。

 開幕前の予想では、昨年同様ダントツの優勝候補に挙げられた。ペナントレースではオリックスの台頭により独走することはなかったものの、優勝を狙える位置は常にキープしていた。

 そんな最中の7月2日。松田は、試合前のノック中に右手人差し指を骨折し、長期離脱を余儀なくされてしまう。

 リーダーの故障はチームにとって大きな痛手である。ましてや松田は、選手会長以前からソフトバンクの顔なのだ。当時の心情を表現するように顔を歪めてから、白い歯を見せて松田が言葉を紡ぎ出す。

「いやぁ……って思ったっす。骨折だと分かった瞬間は、日本一も何もかも頭から消えましたね。ほんと最初のほうはね、『自分がいない間にオリックスに引き離されたら』とか責任を感じましたけど、なったものはしょうがない。シーズン中に復帰できるってことは分かっていたんで、そこをモチベーションにしながら治療に専念していました」

 松田が離脱した時点ではオリックスに1.5ゲーム差を付けられての2位だったチームが、松田が復帰する8月26日までの約2カ月の間に、2.5ゲーム差で首位となっていた。チームは、選手会長が不在の間に奮起していたのだ。

会長だからといって「態度を変えたくない」。

 松田は選手会長になった当初、「なったからって怒ったり態度を変えたくない。今まで通りの自分を見せて、そこでみんながついてきてくれたら嬉しい」と自らの気持ちを述べていた。

 背中でチームを引っ張り、選手全員の意識を優勝という目標に向かせる――。目に見えづらい手法かもしれないが、松田のそのような心構えが徐々にチームに浸透してきた証拠。それが、この2カ月間に現れたのだ。

 顕著な例を挙げれば、9月の大失速の時期もそうだった。

 9月16日の時点で、オリックスとゲーム差4.5をつけて首位。優勝も秒読みと言われていたが、翌日から4連敗を喫し、勝利を挟んでまた連敗と、ソフトバンクは負のスパイラルに陥っていた。

【次ページ】 シーズン中、たった一度の選手ミーティング。

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