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ストライカーか、オールラウンダーか。
久保裕也がスイスで悩む“スタイル”。 

text by

西川結城

西川結城Yuki Nishikawa

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posted2014/12/05 11:00

ストライカーか、オールラウンダーか。久保裕也がスイスで悩む“スタイル”。<Number Web> photograph by AFLO

ELナポリ戦、後半からピッチに立った久保裕也だったが、グズマンにハットトリックを許し敗戦。グループ突破は最終節の結果次第だ。

ゴールハンターとオールラウンダーをつなぐ。

 12月3日。久保はこの日もリーグ戦(アウェイ・ルツェルン戦)で先発を果たした。開始1分も経たないうちに相手DFとの競り合いに勝ってシュート。これは惜しくも外れたが、早速フィジカル強化を証明するシーンを作り出した。

 そして41分、久保がジレンマを吹き飛ばすような結果を残した。

 中盤中央でボールを受けると、ミドルパスで左サイドに大きく展開。そこから1トップのFWにアーリークロスが入り、ヘディングで落としたところに走りこんだのは久保。難しいバウンドだったが、左足で綺麗にミートしたシュートはゴール左上に突き刺さった。

 思わず飛び出した、ガッツポーズ。パスを配給するトップ下の役割をしっかりこなし、自らが求める仕事場であるゴール前でも、これ以上ない結果を示した。後半に入っても、味方とのワンツーから自ら抜け出しゴールを強襲するなど、最後まで久保は鋭く、力強いプレーで輝いていた。

 ゴールだけを目指す本来のスタイルへのこだわりと、チームで必要に迫られている変化。その揺れ幅が今はまだ大きいが、それを徐々に小さくしていくことが、今の久保にとっては急務である。相手にとって“恐い”選手になれる可能性も、その先に存在するかもしれない。

 今後、ゴールハンターとオールラウンダーの両方の自分をつなぎ合わせるヒントとして浮上するのが、本人も意識するという“力強さ”なのだろう。現在の技術とスピードに加え、そのしなやかな強さも身につけられれば、久保は世界で戦う日本人FWとしての理想に近づく。

 今はまだ水面下の存在ではある。静かにスケール拡大に挑んでいる久保裕也。スイスで、そして手倉森ジャパンで、2015年、沈黙を破る瞬間がやってくるかもしれない。

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