“あのディエゴ”が鬼気迫るボールチェイス。

　昇格請負人と称される百戦錬磨の策士・石崎信弘が率いるチームは、おそらく万全の状態でジェフユナイテッド千葉とのプレーオフ決勝に臨むだろう。指揮官が特別なカンフル剤を注入しなくても、恐れず、冷静に、やるべきことを実行に移せる力がある。自信からみなぎるモチベーションもある。

　組織としての完成度は極めて高い。ディエゴ、山崎雅人、川西翔太の3アタッカーが前線からハイプレスを仕掛け、ボール奪取能力に優れたダブルボランチと3バックが見事な役割分担でボールを拾う。奪ったら機動力に優れる両サイドに展開し、ダイナミックなカウンターのフィニッシュをエースのディエゴに託す。

　先頭に立って鬼気迫るボールチェイスを見せるのは、少なくともかつての職場では守備をサボりがちだった“あのディエゴ”である。何よりそのことが、組織としての完成度の高さを物語っている。

石崎サッカーの申し子、宮阪政樹。

　3-4-2-1のフォーメーション図には、黒子に徹して与えられた仕事を完璧にこなせる職人たちが名を連ねる。

　その代表格は、石崎サッカーの申し子と言えるボランチの宮阪政樹。試合後の興奮冷めやらぬミックスゾーン。小さく太い体でチームスーツをきちっと着こなし、小さなカバンを肩から斜めに掛けるルックスはまるでアスリートらしさを感じさせないが、それでいてこの男、柔らかいキャラクターや言葉とは裏腹に、絶妙なポジショニングと“ちょっかい”でしたたかにリズムを作る曲者である。

「僕たちには、失うものは……いや、まあ、負ければ失うものもあるんですけどね（笑）。でも、何かを手にしたなんてまだ誰も思っていないし、決勝もそういう気持ちで戦えればいいと思います。

　今日は、自分の背後のスペースを使われないようにケアしていました。そこはイシさん（石崎監督）に口酸っぱく言われているので、かなり意識しています。いや、でも今日の試合に関しては（磐田の）小林祐希選手がホントにうまかった。3回くらい、トラップだけでかわされちゃいましたから」

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