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杖とボールに託した夢。“伝道師”が世界に挑む。
~手足を失ってもサッカーはできる~ 

text by

瀬長あすか

瀬長あすかAsuka Senaga

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photograph byMoto Yoshimura

posted2014/11/29 10:30

杖とボールに託した夢。“伝道師”が世界に挑む。~手足を失ってもサッカーはできる~<Number Web> photograph by Moto Yoshimura

アンプティは「肢切断者」の意。エンヒッキは6年かけて、この競技を日本に根づかせた。

 杖と杖、体と体がぶつかる激しい削り合いが魅力のアンプティサッカー。その日本代表が、11月30日からメキシコで開催されるワールドカップに出場する。

 アンプティサッカーは、事故や病気で手足を失った人のためのサッカーだ。義足や義手は着けない。クラッチと呼ばれる杖を使い、片足切断の選手たちが一本足でボールを巧みに操る。ゴールキーパーは上肢切断の選手が行い、計7人でプレーする。

 2年ごとに開催されるワールドカップには今大会で出場3回目になる日本だが、その歴史はまだ浅い。今から4年前に国内初のクラブチームが発足し、その翌年に初めての日本選手権が開かれた。いまでは8チームで約100人がボールを追い、代表を目指す選手も増えてきた。

「過去2大会よりも、“選ばれた”人たちのチームになっていることで、意識の高い選手が揃った。勝ちにいく準備はできている」

 そう話すのは、日本代表のエースで日系ブラジル人のエンヒッキ・松茂良(まつもら)・ジアスだ。アンプティサッカーのブラジル代表としてワールドカップに出場した経験もあるエンヒッキは、2008年、就職を機に来日。このサッカーを日本に持ち込んだその人である。

日本のW杯初勝利へ、松茂良のドリブルとFKは不可欠。

 伝道師の思いは強い。日常用の義足を手がける義肢装具士や職場の仲間とともに2年がかりでクラブを作り、競技人口を増やしていった。「日本でも、またサッカーができる。初めての日本選手権でピッチに立った瞬間、泣きそうになるほどうれしかった」と明かす。

 その大会でいきなり11得点を挙げて初代得点王とMVPを獲得。彼のプレーは、足首の柔らかさを活かしたボールタッチが特徴で、クラッチを使って体を入れてくる相手を華麗にかわし、ドリブルで攻め上がる。角度のない位置からのフリーキックも武器。名実共に国内トップの存在となったエンヒッキは、現在も代表の中心として活躍している。

 そんなエンヒッキ率いる日本代表だが、ワールドカップでまだ勝ち星を手にしていない。「過去2回のような悔しい思いはしたくない。優勝を狙うつもりで戦う」と話し、あくまでも強気だ。メキシコでの日本の勝利は彼のプレーにかかっている。

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