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出場義務試合数は誰のための制度?
松山、石川の“集客力”ゆえの苦悩。 

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桂川洋一

桂川洋一Yoichi Katsuragawa

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photograph byKyodo News

posted2014/11/28 10:40

出場義務試合数は誰のための制度?松山、石川の“集客力”ゆえの苦悩。<Number Web> photograph by Kyodo News

プレーオフを制し、わずか2試合目で日本ツアー今年初勝利を手にした松山英樹。米ツアーに挑戦する実力を持った選手たちの力をいかに国内に還元するか、難しい舵取りが求められる。

石川は10試合に出場、松山は2試合だったが……。

 今季開幕時点で2015年までのシードを持っていた石川は優勝した7月のセガサミーカップを含め、9月には5試合を消化(優勝によりシードは'16年まで延長)し、最終戦を含めて10試合に出場する見込み。

 対して、昨年賞金王になったことで2018年までの5年シードを得た松山の出場試合は、セガサミーカップと、今回のダンロップフェニックスだけ。2試合である。ちなみに「3試合以上の消化でも認められる」という別の規定も発覚したのだが、それでも1試合足りない。来季の資格停止は確実と見られていた。

 その渦中、松山はわずか2試合目の出場で優勝を手にした。これによって、特例でもなんでもなく「賞金王の5年シード」とは別カテゴリーで、来年からの「優勝者に付与される2年シード」を獲得したことになる。年末のメンバー登録を終えれば、'15年に関しては資格停止にはならない('16年のシード資格に関しては、'15年の出場試合数が反映される)。

 今回の1勝は、オフの議題となるはずだった「松山の'15年の出場資格」の議論の必要性を“チャラ”にした勝利だったのだ。

「英樹や僕の5年後、10年後なんて……」

 しかし、この松山の実力に甘えて議論を先送りにしていいものだろうか。

 どのスポーツ界でも、海外での活躍が選手としての認知度を高める時代、希望に満ちた有望株を縛る規定がナンセンスという意見もある。国内のゴルフ界への恩返しというツアー側の主張はさておき、話題になったこの問題については、どうもツアーと選手との間の“溝”が見え隠れするのである。

 3月のルール決定直後、フロリダにいた石川はこう話していた。

「僕は5試合なら、自分から出たいと思える、成長を試せる日本のトーナメントやコースがある。アメリカのシードが問題なければ、5はギリギリ出られる。でも英樹はどう思うか分からない。今はケガもあるわけだし……(松山は当時、左手親指を故障中だった)。

 自分も去年は腰が痛かった。これから世界に出ようとする選手には足かせになる。海外で活躍する選手が日本でプレーすれば、レベルも上がるし盛り上がる。長い目で見れば、日本ツアーにとって良いルールではないと思う」

 石川はいつものように建設的な意見を口にしたが、最後にはこうこぼした。

「まあ……英樹や僕の5年後、10年後なんて、(日本ツアーからすれば)どうでもいいと思われてるのかな」

【次ページ】 選手とツアーの関係は良好とは言いがたい。

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