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客観性は必要なし? カルチョを彩る“偏向”解説。
~ミラニスタ全開キャラを楽しめ!~ 

text by

豊福晋

豊福晋Shin Toyofuku

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posted2014/11/17 10:00

客観性は必要なし? カルチョを彩る“偏向”解説。~ミラニスタ全開キャラを楽しめ!~<Number Web> photograph by AFLO

9月のパルマ戦、クルデーリは本田のゴールを見て飛行機ポーズでスタジオを駆け抜けた。

 イタリアのスタジアムの記者席で試合を見ていると、あらゆる所から机を叩く音や叫ぶ声が聞こえてくる。近くのファンが騒いでいるわけではない。一部のジャーナリストが、目の前で繰り広げられる試合に熱狂しているのである。

 愛するチームを派手に応援する彼らのスタイルはイタリアで受け入れられ、ひとつの文化となっている。その中心となっているのが、Telecronisti tifosi(サポーター解説者)と呼ばれる人たちだ。

 本田圭佑のミラン移籍により日本でも知られつつあるのが、ミランの“サポーター”であるティツィアーノ・クルデーリだ。彼は地方局『7ゴールド』のサッカー番組『ディレッタ・スタディオ』の名物解説者である。同局はセリエAの放映権を持っていないので、出演者たちはテレビ画面を見ながらそれぞれの反応を見せる。ゴールを決めれば席を飛び上がり、主審が怪しい判定をすれば激昂する。クルデーリはミランの選手がゴールを決めれば血管が切れそうなほど叫び続け、視聴者はそれを見て楽しむ。スタンドではファンに握手を求められるほどミラニスタに愛される存在だ。

「見せかけの客観性に隠れることの方が罪だ」

 クラブ側がそんな人材を引き抜くこともある。ラジオ番組で熱狂的にインテルの中継をしていたロベルト・スカルピーニには現在、『インテル・チャンネル』のディレクターだ。しかし相手サポーターにも名前の知られた彼らには危険も伴う。スカルピーニはスタジアムでインテルの宿敵ユベントスのサポーターに囲まれ、トイレに監禁されたこともあるという。客観的に報じる普通の解説者よりも、ファンの間では有名な存在なのである。

 解説、実況という立場にも関わらずどちらかのチームを熱狂的に応援するという同ジャンルを確立したのは、ミランを愛するカルロ・ペッレガッティだ。彼は'80年代からラジオ中継でそれを始め、選手のあだ名で実況をするスタイルも定着させた。あだ名での実況解説は後に紙媒体でも使われるようになっている。彼の「見せかけの客観性に隠れることの方が罪だ」という意見も興味深い。

“サポーター解説者”に真面目な試合分析を求めてはいけない。視聴者もそれを望んではいない。様々な熱狂解説者たちが彩る偏った中継は、サッカー報道のひとつのあり方だ。

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