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日本シニアオープンに漂う“人間臭さ”の魅力。
~倉本の優勝とニクラウスの至言~ 

text by

三田村昌鳳

三田村昌鳳Shoho Mitamura

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photograph byTaku Miyamoto

posted2014/11/15 10:30

日本シニアオープンに漂う“人間臭さ”の魅力。~倉本の優勝とニクラウスの至言~<Number Web> photograph by Taku Miyamoto

15アンダーで優勝した倉本昌弘。今年2月、現役選手初の日本プロゴルフ協会会長に就任。

 日本の男子ツアーが低迷している。様々な理由が考えられるが、ひとつは選手が画一化されて、個性が感じられないということが大きな要因ではないかと思う。

 かつてはスイングを見ただけで選手が判別できるほど、個々の特徴がはっきりしていた。今はそれがないし、ゲーム性を愉しむというよりも、飛距離やショットの精度のみが重要視されているような気がする。ともすれば、無味乾燥な試合になってしまう。

 これは米ツアーにもいえる傾向らしい。最近、ジャック・ニクラウスが「あまりにもデータ中心になり過ぎている」と語っていた。

 十数年前から一打一打を分析し、数値化するショットリンクというシステムが導入された。ニクラウスが言わんとしているのは、“ゴルフの醍醐味はデータ分析だけでなく、人間力やゲーム性にあるのだから、データに頼りすぎるのはいかがなものか”ということだろう。

素振りすらせずに打つ倉本から感じる個性の塊。

 そんな中で見た日本シニアオープンは、ある意味で新鮮だった。特に優勝した倉本昌弘のゴルフには、現代の選手にはない“懐かしさ”を覚えた。デジタル時代の中でアナログ感が漂っていた。

 倉本は構えたらすぐに打つ。とにかく速い。他の選手が打ち終わった後、倉本にテレビカメラが向くと、すでに打ち終わっているという光景が、しばしばあった。普通は、スイングに入る前のアドレスからショットを打つまで、一連のルーティンの動きがある。でも、倉本は素振りすらほとんどせずに打つのだ。

 これこそ今のゴルフに欠けている“個性”と言えるのではなかろうか。優勝を決めた後、倉本は「この歳(59歳)ですから、勘も鈍ってますよ。だから諦めるところは諦める。今の自分にできることしかやらないんです」と言った。

 誰もが長いゴルフ人生の中で何度も波を経験している。体の故障に悩まされることもあっただろう。それを騙し騙し、ケアしながら戦う選手にこそ、人間臭さが見え隠れする。シニアツアーには、倉本以外にも個性の塊のような選手が多くいる。

 ギャラリーたちは、そんな彼らの個性的で人間臭いゴルフに、ほっと安堵し、親近感を覚えるのかもしれない。

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