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<指揮官交代の衝撃を超えて> サガン鳥栖 「躍進は、終わらせない」 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byNanae Suzuki

posted2014/11/11 11:30

<指揮官交代の衝撃を超えて> サガン鳥栖 「躍進は、終わらせない」<Number Web> photograph by Nanae Suzuki
優勝を狙える位置にいながら、まさかの監督交代。
この決断によって、躍進は終わると思われた。
しかし、彼らは今も上位に踏みとどまっている。
不屈のファイティングポーズを取り続けて――。

 鳥栖の町を眺める標高130mの朝日山。

 新たなシーズンを控える真冬、この小さな山に積まれた290ある石段を駆け上がるトレーニングが毎年の名物となっている。

 急こう配かつ一段一段が高い。この石段を含むコースを休みなく、10周もする。

「軍隊みたいなチーム」に変貌させた指揮官の解任。

 地獄の石段トレーニングに、一日3部練習もある。シーズンインに備えて徹底的に、肉体をイジメ抜くのがサガン流だ。誰かが言った、「あそこは軍隊みたいなチームだ」と。

 あきらめずに走る、ひるまずに闘う。90分間、鍛え抜かれた11人全員が攻守にハードワークする。徹底されたキック&ラッシュ。夏の真っ盛りに彼らは三たび首位に立ってサッカーファンを驚かせた。

 だがそのとき、激震が走った。弱小クラブを闘う集団に進化させたユン・ジョンファン監督が突然、解任されたのだ。契約更新に伴う話し合いが平行線に終わったことで、クラブが下した苦渋の決断であった。

 誰かが言った、「これで今年のサガンは終わった」と。昨季、首位争いの最中、監督交代に踏み切ったことが結果的に凶と出て一気に下位に沈んだチームとダブらせるように。

 しかし、しかし。

 ユン体制のもとコーチを務めてきたOBの吉田恵を監督に昇格させたチームは、粘り腰で上位に何とか食らいついていく。

 カリスマ指導者を失って、何故それができているのか――。

安田は「首位にいるのに何でや、って正直思いました」

 8月8日、クラブはごった返していた。

 ユン監督の任が前日に解かれ、練習前に選手が集められて監督交代が発表されたのだ。

「そりゃ、びっくりしましたよ。首位にいるチームですから、何でやって正直思いました」

 今季加入して、首位争いに貢献してきた安田理大の言葉は、チーム全員の共通した思いを代弁していた。

 このとき、選手側の立場で動揺を最小限に食い止めようとしたのが、不動のボランチでキャプテンマークを巻く藤田直之だった。選手だけを集めてミーティングを開き、一人ひとりの目を見て強い口調で言った。

「もはやクラブが決めたこと。俺たちは前向きにやっていくしかない」

 全員が頷いていた。だが……。

【次ページ】 引いて守られると対抗策が取れない過渡期だった。

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